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社説「島伝い」

2010年4月5日

己の力の出し方を知る

先月下旬にイタリア・トリノで開催された世界フィギュアスケート選手権で男子の高橋大輔選手と女子の浅田真央選手が揃って金メダルを獲得しました。2月のバンクーバー五輪でもメダルを獲得した2人ですが、高橋選手はその後の練習不足で体重が2キロ増えてしまい「モチベーションを上げるのが大変だった」とのこと。浅田選手は、オリンピックで韓国のキム・ヨナ選手に金メダルを奪取された悔しさを胸に、オリンピック後もイベント出演などを控えて練習に集中、本人も「自分にとって一番の演技」と語る出来で、SP7位と出遅れたキム選手のフリーでの追い上げも交わしての優勝でした。

 
2月にバンクーバーで白熱した闘いが繰り広げられるのをテレビで見たトリノの観客は、その1ヵ月後の世界選手権で五輪の再現となるようなハイレベルな争いが目の前で繰り広げられるのを期待していたことでしょう。しかし、調子の波を五輪に合わせていた選手の多くにとって1ヵ月での再調整は難しいものがあったようで、男子は五輪の金、銀両メダリストが出場を回避、女子は五輪とほぼ同じメンバーが揃っていたもののキム選手をはじめトップ選手にミスが相次ぎ、会場内がどよめくシーンが幾度となくあったようです。たとえ一流選手であっても、調整してしっかり集中できる状態になければ、やはり持てる力を発揮できないということでしょう。仕事でも同じで、たとえどんなに能力が高くても、体調不良で十分に集中できなければその力を発揮できず、ミスでお客様に迷惑をかけてしまうといったことも起こり得ます。

 
自分がどういう状態の時に一番力を発揮できるのかを知り、自分の弱点を把握してそれを補う術を持つこと、つまり己を知らなければ、自分の波を調整することも持てる力を十分に発揮することも難しくなります。

 
五輪後も練習に集中し、世界選手権で実力を存分に発揮した浅田選手、マイナス要因を自覚しながらも本番までにしっかり調整した高橋選手、どちらも己を知り、力の出し方を知っていたからこそ掴めた栄光だったのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.164(2010年04月05日発行)」に掲載されたものです。

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