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社説「島伝い」

2010年5月3日

ほめる力・叱る力

「自分の部下をよくほめている」と答えた上司は9割以上、「自分の上司はよくほめてくれる」と答えた部下は約1割――日本のある調査でこんな結果が出たそうです。どちらももっと低い数値になるのかと思っていたので、ちょっと意外でした。

 
上司と部下の関係に限らず、ほめることも叱ることもコミュニケーションです。ほめてばかり、あるいは叱ってばかりと偏るのも考えもの。両者のバランスを取ることが大事でしょう。さらに海外で働いていると、日本人以外の部下や仕事相手をほめたり、叱ったり、が必要になります。その時の言語はシンガポールならほとんどの場合は英語です。日本人同士で日本語でやっていても会話のキャッチボールにならないことは多々あるもの。まして母語ではない英語となると、どんな言葉を選ぶか注意が必要です。言い回しをひとつ間違えば、ほめたつもりが相手を逆に不快にさせたり、誤解を生む恐れもあります。

 
日本語ばかりを話す環境に生まれ育った多くの日本人にとって、外国語を使いこなすのは簡単なことではありません。しかし、ネイティブの人間には勝てないからと諦めてしまうのではなく、学ぶ心が大事ではないでしょうか。今、日常的には差し支えない程度に英語を話せるのであれば、もう一歩先を目指して、英語でも相手をほめたり感動させられる表現力が身に付くように学び続けようという姿勢が、やはり必要だと感じます。

 
言語はコミュニケーションを助ける重要なツールのひとつ。より良い形でコミュニケーションを取るためにも、伝えたいことを適切な言葉を使って表現できているか、時々見直してみることが必要でしょう。ちょっと気の利いた表現を見つけたら、ネイティブでもないのに、などと言わずに使ってみてはどうでしょうか。何回か使っているうちに自分の表現として身につくようになるのは、外国語でも母語でも同じです。

 
言語の習得に完璧などありえません。現状で事足りているからと足踏みせずに、言葉の表現力を磨き続けることは、グローバルに通用するほめる力、叱る力をアップする上でも役立つのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.166(2010年05月03日発行)」に掲載されたものです。

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