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社説「島伝い」

2010年5月17日

人気者であればそれで良い?

今年は参議院選挙の年、早ければ7月には選挙が行われる見込みです。昨年の衆議院総選挙に大勝した民主党が政権の座に就いておよそ8ヵ月、評価を下すのは時期尚早との意見もありますが、次の参議院選挙でこれまでに民主党が行ってきた政治が問われることは間違いないでしょう。また、野に下った自民党が、長年与党であった政党としての責任をどう果たそうとしているのか、どれだけ危機感を持ってやってきたかも同時に問われることになるでしょう。

 
参議院選挙に向けて、比例代表での各党の候補者擁立の動きが最近報じられていますが、その中には「なぜ参議院議員に?」との疑問を感じるケースがあります。知名度が高く人気者でありさえすれば、政治活動の実績などゼロでも構わない、票を集めてもらって次の選挙に勝ちさえすればそれで良いと本気で勘違いしているのではないか、と思わず疑ってしまいます。

 
参議院は衆議院とともに日本の国政を担う重要な議会。各政党は候補者擁立を検討する際、次の選挙でいかに勝つかだけでなく、長い目で見て日本のことをしっかり任せられて、日本のために仕事ができる有能な人間をひとりでも多く参議院に送り込むことを考えるべきではないでしょうか。

 
先日下院総選挙が行われたイギリスでは、保守党が労働党の獲得議席数を上回って第1党となり、政権交代が行われました。キャメロン新首相は43歳と若く、2005年末に保守党党首に就任以来、党の立て直しを図り保守党の支持率回復に成功してきました。長い歴史とともに様々な問題を抱えているイギリスですが、若手政治家が二大政党の中でしっかり実力をつけて台頭している点は、日本と大きく異なることに注視すべきでしょう。

 
日本の政治の動向は、良くも悪くも世界中が見ています。海外在住者であればそれを否応無く実感させられます。日本のことを「アメリカの不沈空母」とした表現もかつてありましたが、「泥舟」と揶揄されないようにあってほしいものです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.167(2010年05月17日発行)」に掲載されたものです。

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