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社説「島伝い」

2011年3月7日

一党独裁にある利点

これまでに幾度かシンガポールの総選挙を見て来ましたが、投票の翌日は多くの国民が寝不足顔で目が真っ赤。理由を聞くと、テレビの選挙速報を深夜まで見ていたと言います。そこまでして選挙の結果を見なくても第一党であるPAP(人民行動党)の勝利は確実なのではと思いきや、自分の選挙区でPAPが勝つかどうかが重要なのだそうです。野党が勝利したり、高い得票を得た選挙区では、HDB(公営住宅)の改修工事が後回しになるなどの仕打ちが待っているとのこと。

 
シンガポールでは21歳以上の国民は全員選挙権を持っています。正当な理由無く棄権すると期限付きで選挙権を剥奪されることなどから、「選挙義務」という言い方もあるようです。そのおかげもあって投票率は毎回90%を超えています。

 
2月24日に次期総選挙の区割りが発表され、総選挙の実施が近いのではとの観測が広がっています。過去には総選挙の告知から立候補届けまでの期日が数週間しかなかったために対応しきれなかった野党などから批判の声が上がったことも。また、総選挙の区割りは与党側に有利に働くように仕組まれたゲリマンダーだとの批判も毎回出ています。

 
時に強引とも思える施策もありますが、シンガポール独立の1965年以来続いているPAPの一党独裁体制は、特にこの国の経済発展にはかなり有利に働いているのも事実。政府は重要な政策にも迅速に判断を下して、機を逃さず即実行に移していけます。二つの院の間でねじれ現象が発生し、国会運営に四苦八苦の日本や米国から見れば羨ましい状況でしょう。

 
シンガポールはかねてから「欧米型のスタイルは、必ずしもアジアに合うとは限らない」というスタンスで、政治体制も英国の影響は受けつつも独自のスタイルを築いてきました。さらに、徹底的に汚職排除に取り組んできた結果、世界でもトップクラスのクリーンで安定した政治を実現し、外国企業などからも厚い信任を得ています。

 
「衆愚」と揶揄される日本の民主主義政治の現状も、間違いなくどこかで変えなければならないのですが……。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.184(2011年03月07日発行)」に掲載されたものです。

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