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社説「島伝い」

2011年1月17日

足元、見えてますか

1月3日に通産省から発表されたシンガポールの通年の国民総生産(GDP)成長率は速報値で14.7%を記録、昨年7月に発表された15%前後という予想値にほぼ近いものでした。

 
ここ1年ほどの急速な景気回復で、一見シンガポールのどこでも景気が良いようですが、皆が皆儲かっているという訳ではもちろんありません。ただ、全体の数字が良いことでシンガポールという市場にも火が付き、国を挙げて力を入れている外国企業や投資家を呼び込む流れができているのも事実。これもまたシンガポールに来れば誰もが儲かるという訳ではありませんが、実際にチャンスを掴んでいる事例もあります。

 
景気が良い時には、いわゆる“オイシイ話”も多くなるようです。その話が本当に自分にとってのビジネスチャンスになるのか、よく見極めずに話に乗ってしまうのは危険だということは平常時には極めて明白なのですが、好景気の浮かれ騒ぎの渦中にいると安易な判断をしやすいもの。即断即決でタイミングを逸しないことが大事な時もありますが、周りのことばや情報に惑わされていないか、自分の足元が見えているか、一歩踏み出す前に立ち止まって考えてみることも必要でしょう。

 
最近ではシンガポール国内の企業と海外の企業とを結びつけるマッチングビジネスも盛んなようです。中にはその国の人や企業をシンガポールに連れてきて終わり、連れて来られた人は高い参加費を払い、費用をかけて大事な商材をたくさん抱えて来たのに結局何もならなかった、というケースもあるようです。自国以外にも市場を求めて足を運び、現地企業に接触してビジネスチャンスを掴む、というコンセプトは決して悪くありませんが、せっかく時間も予算もかけるのであれば、周りの情報に踊らされず、最後は自らの目で見極める必要があります。

 
景気が良い時は物事の流れも勢いが良く、踏み外した時のダメージも大きいものです。2011年という新しい年に踏み出す一歩をより確かなものにするために、環境の良い今だからこそ自分の足元をしっかり見ることを癖付けた方が良さそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.182(2011年01月17日発行)」に掲載されたものです。

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