シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP闇の中のかすかな光明

社説「島伝い」

2010年9月20日

闇の中のかすかな光明

9月14日に行われた民主党代表選挙の結果、菅直人氏が代表に再選され、菅政権の続投が決定しました。国内外に問題が山積している中で党を実質二分して争っていることに「単なる内ゲバ」といった強い批判もありました。

 
一方、昨年からじわじわと進んできた円高が6月頃から急激に進行。にも関わらず、円高対策が取られないことに経済界からは不満の声が出ていました。菅首相も介入に積極的な発言はなかったことから、80円台までは容認されると見る向きが大半だったようです。代表選の公開討論会の中で単独でも為替介入をやるべきと発言していた小沢氏が敗れ、これで当面為替介入の可能性はないという声もありました。

 
その翌日の9月15日に突如6年半ぶりに行われた為替介入は、世界中の市場関係者を驚かせました。世界的に円高が容認されている中、今回は単独での介入となりましたが、大方が予想していなかったタイミングだったこともあり、この日1ドル82円台に突入した円は介入後に一気に約3円下がって85円台になりました。翌16日も介入に対する警戒感が強く、同じ水準が維持されました。協調介入より効果が薄いといわれる単独介入としてはかなり効果を上げたといえるでしょう。菅首相の「今後も必要な時には断固たる処置をとる」という言葉が本気であることを世界にも印象付けました。また、日銀も金融市場に出回る円資金を吸収しない方針を決定、介入に踏み切った政府と歩調を合わせ、円高進行を阻止する姿勢が鮮明になりました。

 
もちろん、一度の単独介入だけでは長期的には効果にも限度があるでしょう。しかし、日本としてこれ以上の円高は容認しないという姿勢を明確に示したことは評価に値するのではないでしょうか。米議会などからは今回の介入に対して批判も出ているようですが、単独介入を決めた段階で不満が出ることは織り込み済みでしょう。今回の日本としての行動が、先行きが見えず真っ暗闇の中を歩いているようだった日本の道筋を照らす光につながることを願っています。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.175(2010年09月20日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP闇の中のかすかな光明