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社説「島伝い」

2010年8月16日

過ちを繰り返さないために

8月という月は、過去を振り返っていろいろと考えさせられることが多い月であるようです。今年は日航ジャンボ機墜落事故から25年ということで日本国内のメディアの特集や本の出版、追悼イベントなども例年以上に多いようです。

 
事故が起きた1985年8月12日はお盆の時期でもあり、首都圏から関西方面への旅行客や帰省客、夏の甲子園を観戦するために搭乗した客などで、JAL123便はほぼ満席。しかし夕刻に羽田を発った同便は、目的地の大阪・伊丹空港に到着することなく群馬県多野郡上野村の御巣鷹の尾根に墜落しました。

 
近年、サービスなどの簡素化による格安な料金を売り物にしたバジェット航空各社が目覚しい躍進を遂げ、近距離便だけでなく長距離便にも既に多数就航しています。価格が下がり利用しやすくなることは乗る側としても嬉しいことですが、過当な価格競争などのしわ寄せが安全面に及ばないよう、その徹底は声を大にして訴えたいところです。

 
サービスに満足がいかないだけなら、次からは違うものを選択すれば良いでしょうが、人の命に次はありません。日航機の事故で失われた521名の人生は、25年前に止められてしまったままです。25年という歳月の間に経験できたはずの人生の喜怒哀楽、その重みや失われたものの大きさ、家族や友人の悲しみの深さは計り知れません。惨事を繰り返さないためにも、事故の教訓が今後も生かされ続けることを強く望みます。

 
8月は、広島、長崎への原爆投下、第2次世界大戦の終結などのできごとがあった月でもあり、戦争がもたらす悲劇について考えさせられる機会も多くあります。たとえ多くの人にとっては生まれる前に起きたできごとであっても、戦争の悲惨さは多くの記録や証言からもたどることができますし、これからも学び続けることができます。

 
戦争も事故も過去の出来事として受け流さずにしっかり受け止め、同様のことが繰り返されて尊い命が奪われることのないようにすることは、今生きている我々が未来に対してやるべきことのひとつでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.173(2010年08月16日発行)」に掲載されたものです。

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