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社説「島伝い」

2016年7月4日

イギリスのEU離脱決定の影響

イギリスで6月23日に実施された国民投票は、大方の予想に反して欧州連合(EU)からの離脱支持が過半数を超えるという結果になりました。その後、わずか数日の間に英ポンドが対米ドルで10%以上下落し、世界各国の株式市場で株価が大幅に値下がりしたことなどから、先行きに対する不安感が一気に広まりました。今後も金融の分野だけでなく、貿易や労働市場、ヨーロッパ全体の安定性など様々な方面に影響が及ぶとみられます。

 
シンガポールも例外ではなく、株価の下落や、ポンド安を受けて両替商が大混雑するといった影響が見られました。過去にこの国は、同国史上最悪とされる1985年の不況や、1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマン・ショックといった経済危機に見舞われ、その度にマイナス成長を経験しながらも、わずか数年で回復に成功してきています。ただし、回復基調に戻るまでの期間には、ビジネス環境の急激な悪化を受けて、対応に苦慮した企業が少なくありませんでした。過去の経済危機を実際に経験している企業は、当時どのようにして乗り切ったのか、あるいはなぜ十分に対応しきれなかったのか、今一度見直してみるべきでしょう。これからの変化を見極めたり、対処するためのヒントが得られるかもしれません。

 
イギリスのEU離脱に向けた手続きはまだこれからですが、今後さらに様々な面で流れが変わることは間違いなく、シンガポールに住む我々も無関係ではいられません。国、企業、個人それぞれのレベルで、状況の変化に対応するために知恵を絞れるか、工夫できるかが問われます。うまく乗り越えられれば非常に大きな力となることは、シンガポールという国を見ればよくわかります。

 
イギリスでは国民投票の再実施を求める声も多く、しばらくの間は同国全体が揺れ続けることになりそうです。何が起きているのか、これから何が起ころうとしているのか、我々自身でしっかり情報収集し、把握していく必要があります。たとえ大きな変化が起きても、貴重な経験と前向きに捉えて、乗り切れるようにしたいものです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.305(2016年7月04日発行)」に掲載されたものです。

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