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社説「島伝い」

2011年11月21日

車から見える時代の流れ

1990年代半ば、シンガポールでは「同じ信号に2回引っ掛かったら渋滞」と言われていました。2000年の自動車登録台数は約70万台。ちなみに当時の人口は約400万人。2010年の自動車登録台数は約95万台で、人口は約500万人。この10年間の人口の増加率は約26%でしたが、自動車は約37%の増加。同じ信号で1度どころか何度も待つことも珍しくなく、ラッシュ時間帯以外でも渋滞が頻繁に発生しています。

 
以前は自動車ローンの金利も今より高く、個人には車は高嶺の花でした。思わず「懐かしい」という言葉が出るような車でも、所有していること自体がステータスでした。しかし、近年ローンの金利も下がり、個人の自動車所有率が上がっていますし、若者や女性のドライバーが増えているのも感じます。

 
限られた国土の中でいかに渋滞を緩和するかは、シンガポールにとって重要な課題のひとつ。これまで新規車両登録権利書(COE)発行数のコントロールや、ノンストップ自動料金収受システム(ERP)の導入・運用などの策が取られてきました。ここ2年近くはCOEが高騰、従来であれば廃車になっていた車が中古車市場を経て再び路上に出るため車の減少スピードが落ちており、COE発行数の大幅な削減にも関わらず全体の車両数はまだ増え続けています。

 
4ページのニュース「COE制度の修正、自動車販売業者が政府に提案」にもあるように、ついに業界団体が政府に制度の見直しを求めるに至りました。その中にある、環境に配慮した省エネ車専用のCOEカテゴリーを設けるという提案は特に注目に値すると思われます。これが実現すれば、ハイブリッド車はもちろん、電気自動車の導入が進むと考えられるためです。日本では本格普及には至っていませんが、シンガポールであれば国土の小ささが幸いして、一旦普及し始めれば、日本よりはるかに早く進む可能性が十分あります。そこに国の制度でのバックアップがあれば、普及スピードは一段と上がるでしょう。

 
ほんの数年後には、シンガポールの路上を走る車の種類が今とは大きく異なっているかもしれません。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.201(2011年11月21日発行)」に掲載されたものです。

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