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社説「島伝い」

2012年4月16日

国民と「新参者」の間

4月5日付の記事「国民と『新参者』の間に溝、首相が懸念を表明」によるとリー・シェンロン首相が国民と新たに市民権を得た外国人や永住者、外国人労働者などの“新参者”との間に存在する可能性がある溝について言及、「自己中心は社会に望ましくない」とコメントしたとのことです。

 
最近10年余りの間に急増した“新参者”はシンガポールの人口の約3割を占めています。かつては報道への規制も厳しく、一般国民が手に入れられる情報には限りがありましたが、今や誰もがインターネットにアクセスできて、シンガポールだけでなく海外の情報を個人が自由に入手できる時代。最近、ある中国人学生がブログに投稿した「シンガポールには人間より犬の方が多い」という発言が問題になり、メディアでも取り沙汰されました。ひと昔前であれば、一学生の発言がここまで大きな波紋を呼ぶことも無かったでしょう。

 
外国人はシンガポールという国に住ませてもらっている立場で、やはり言って良いことと悪いことがあり、今回の中国人学生の発言に反発する国民の気持ちもわからなくはないのですが、怒るだけでは溝を広げることになるでしょう。

 
外国人が増えたことで近年変わったことのひとつに自転車の利用者が増えたことも挙げられます。つい最近も片側3車線の道路を運転中に、まん中の車線を走行している自転車に遭遇しました。危険なので一番左の車線に移ろうとしたら、自転車がフラフラと同じく左の車線へ移ってきてヒヤリとしました。自転車での走行に不向きな道路も多く、国に対して整備を求める声もありますが、それだけでなく、車、バイク、自転車の各利用者が共存するためのルール作りや、各個人が積極的にルールやマナーを守る意識作りが必要です。

 
外国人が入ってくると、今までその土地にはなかった文化も同時に入ってきて、新たな変化が起こります。外国人も国民もその変化に対応して「共存」する道を考えることで、次のシンガポールの姿が見えてくるのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.210(2012年04月16日発行)」に掲載されたものです。

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