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社説「島伝い」

2012年5月7日

海外で通用する人材とは

ここ1~2年ほど、日本からシンガポールへの企業の進出や就職を目指す人材の増加が顕著に見られ、一種ブームのような流れがあります。もちろん多くの場合、ブームだから来るというよりは、企業や人材がシンガポールに出るタイミングが重なったということでしょう。

 
90年代半ばまでは、シンガポールで働く日本人は日系企業の駐在員がほとんどで、現地採用として働く人はまれでした。大きく変わったのは、日本が「就職氷河期」の只中にあった1997年頃。特に女子学生にとっては厳しい状況が続き、海外に就職先を求める人達が増えました。彼女たちのことを「海外逃亡症候群」と批判的に報じたマスコミもありましたが、優秀な人たちが多く、海外各地で現地採用として職に就くと活躍するケースが多く見られました。シンガポールでも珍しくなくなった現地採用増加へのきっかけにもなったと考えられます。

 
経営者の方々と海外で通用する人材についてお話すると、まず挙げられることが多いのが「語学力以上にコミュニケーション力」という意見。海外では人と人との繋がりがより重要で、多くの方が人的ネットワークは財産と感じています。もうひとつ挙げられるのが、「日本国内でも通用する人」。海外で活躍する人は、既に日本でも実績を残していたり、日本に戻ってからも活躍している人が多いというわけです。

 
これは、企業に置き換えても同じことが言えるのではないでしょうか。ある企業コンサルタントの方も、「海外進出に成功している企業は、日本国内での実績を踏まえ、軸をぶらさずに活動できている」と話していました。逆に、日本国内では行政とのやり取りや諸手続きにもしっかり目を配っている経営者が、海外では「英語が良くわからないから」とすべて任せてしまい、実績を上げられないまま撤退、というケースがあるようです。

 
海外進出は良い面ばかりではありません。事業として軌道に乗せられずに終わってしまうケースもあると知った上で、日本でやってきたことを海外でも同じようにきちんと実践できれば、結果につながる可能性は高くなると言えそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.211(2012年05月07日発行)」に掲載されたものです。

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