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社説「島伝い」

2015年3月2日

自分基準からのさじ加減

最近、海外進出に関心のある方々と日本で会う機会が何度かありました。海外進出に関する情報や事例はインターネットなどでも調べることができますが、教科書があるわけではなく、系統立てて知識を身に付けられるものではありません。膨大な情報から必要なものを取捨選択し、手さぐりで、時には専門家の手を借りながら整理して、海外での事業に活用しなければなりません。その手間暇がどれほどのものかは、実際に海外で長年事業を展開している方々の多くがよくご存知でしょう。
今回特に強く感じたのは、海外進出に関心を持つ日本の方々も多種多様であるということ。例えば、海外進出セミナーに出席したり、実際に海外で活動する人々と会うことが、やや過大評価されているように感じられる場面がありました。海外での事業展開までの道のりにおいては、小さな過程の1つに過ぎないはずなのですが……。また、海外進出のリスクを過剰に警戒するケースもあります。海外でのトラブルは、日本国内での同様のトラブルへの対応に比べて大変な場合が多いのは事実ですが、リスクをゼロにしようとしているかのように聞こえると、やはり疑問を感じます。あるいは、日本での数々の成功事例から得た自信で、海外でも同じやり方で成功できると考え、現地の情報にはほとんど関心を示さない方々もいます。
シンガポールで働く多くの方々は経験があるでしょうが、海外では自分の基準のままでは通用しない場面が多々あります。自分が正しい、と周りや地元スタッフの意見などに耳を貸さずに押し通したら、ビジネスで期待するような成果をあげることは困難です。もちろん、自分の基準を完全に捨てよ、というわけではありません。必要なのは、過剰反応することなく自分の基準を持ちながら、現地に合った方法や施策を取れるよう冷静に「さじ加減」することでしょう。
普段シンガポールで活動する我々もまた、無意識に「日本からの進出企業」とひと括りに捉えてしまいがちですが、実際には様々な企業があり、スタンスも異なります。それぞれのケースに合わせて「さじ加減」しながら対応することが、我々にもまた求められるのではないでしょうか。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.275(2015年03月02日発行)」に掲載されたものです。

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