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表紙の人

Vol.270

2014年12月1日

加納 良一さん

ジャパニーズフレンチレストランLewin Terrace・Executive Chef。

asiax (8)今年4月に開店したレストランLewin Terraceで料理長を務める。和食とフランス料理の両方の素材や技法を使った料理が特徴的な同店のメニューを作り上げた。

自信作の1つは「甘鯛のお茶漬け」。鱗を付けたまま香ばしく焼いた甘鯛の切り身を、リゾットに乗せ、骨で取ったスープをかけていただく。甘鯛とリゾットの間にはひじきのピューレが隠され、黒いピューレがスープに溶け出すと、色合いの変化も楽しめる。「『こんなクリスピーな食感は初めて』とローカルやヨーロピアンのお客様にも喜ばれます」。開発したメニューは30皿近く。専門のイタリアンやフレンチの技術をベースに、クリエイティブな料理の数々を生み出した。しかし、以前は「フレンチやイタリアンを、保守的に捉えていた時代もあった」と話す。考えが変わったのは、前の職場がきっかけだった。
昨年7月まで、日本の豪華客船「ぱしふぃっくびいなす」でセカンドコックを務め、スイートルーム乗客専用のレストランを担当した。約150日間で世界を一周する船に多い高齢の乗客は、旅の後半には和食が恋しくなってくる。そこで、和食担当のスタッフから習ったり、本を読んだりして、日本人が馴染んだ味を自分の料理にどう取り入れるかを考えるようになった。一方で、フィリピン人の乗組員が多かったことも視野を広げるきっかけになったという。乗組員用の食堂で、彼らの故郷の味を教わった。「暑い国だからか、酢を使って味をさっぱりさせるのが得意で驚きました。もっと海外の文化を知りたい、コミュニケーションを取りたいという気持ちも高まりました」。そして、同じ船のスタッフだった妻佳織さんと共に、海外に働く場を求めた。
料理人を目指したきっかけは、中学生の頃に見た人気テレビ番組『料理の鉄人』。同じ食材で、和・洋・中それぞれの「鉄人」が生み出す料理の多彩さに驚いた。「華やかな舞台に立ってみたいなと思って」というのも動機の1つになった。
ローカルのシェフ6人を率いる今の目標は「アジアのトップレストランにノミネートされること」だという。「旨みを重視するのが自分らしい料理のスタイルだと思います。この国の料理には強い味も多いですが、惑わされず、自分が信じたものを作って評価されることを目指したいですね」。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.270(2014年12月01日発行)」に掲載されたものです。

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