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法律相談

2010年1月1日

Q.最近、高齢労働者の再雇用に関する報道を目にする機会がありますが、法律の改正などがあったのでしょうか。

高齢労働者の再雇用

現在、法律で定められている最低退職(定年)年齢は62歳ですが、シンガポールの労働者人口に占める高齢労働者の割合が今後増加することが予想されています。若年労働者人口の減少と高齢労働者の持つ技術・能力の有効活用という観点から、雇用者は、一定の条件を満たした高齢労働者に対しては65歳(延長で67歳)まで再雇用の機会を与えなければならないとする、再雇用に関する法律が2012年1月1日までに制定されることになっています。

 

法律の具体的な中身はまだ検討段階で公表されていませんが、この再雇用に関する法律の検討の際に考慮要素となるであろう、Tripartite Guidelines on the Re-Employment of Older Employees(以下、「ガイドライン」)が高齢労働者の雇用に関する三者委員会(Tripartite Committee on Employability of Older Workers)から2009年11月16日に公表されました。ガイドラインは、雇用者と労働者に再雇用に向けての準備を促し、再雇用にあたってとるべき指針を提供しています。

 

ガイドラインの主な内容は次の通りです。

 

  1. 雇用者は、高齢労働者の過半数を再雇用するよう努力するものとし、健康・能力上問題がない高齢労働者全員に対して再雇用の申し出を行うのが望ましい。
  2. 雇用者は再雇用の遅くとも1年前までには(定期人事考課の際に行うことも可能)従業員に対し定年前計画と再雇用に関する話し合いをしなければならない。
  3. 雇用者は、再雇用の方法として、(i)同一職種(但し、賃金等の労働条件は一定の範囲で調整可)、(ii) 現在の職種に一部変更を加えた形又は異なる職種への再配置(必要であれば、雇用者は労働者に対し必要な訓練を提供しなければならない)、(iii)(パートタイム、ジョブシェアリングなど)雇用者と従業員が相互に取り決めた形態での再雇用の方法を採用することができる。
  4. 雇用者は、定年の3ヵ月前までに、健康・能力上問題がない高齢労働者に対しては労働条件を明示した再雇用契約を、それ以外の高齢労働者に対しては再雇用しないことを提示しなければならない。
  5. 特に再雇用についての話し合いがないまま定年後も雇用されている労働者については従来と同様の条件で再雇用されたものとみなすことができる。
  6. 雇用者は、3年を期間とする(ただし65歳まで)再雇用の申出をするか、労働者が健康・能力上問題がない限りは65歳まで更新することを条件とした最低1年を期間とする再雇用の申し出をすることができる。
  7. 健康・能力上問題がない労働者が引き続き再雇用されるよう、雇用者は可能なあらゆる再雇用の方策を検討しなければならないが、それでも再雇用が難しい場合は早期に労働者に対してその旨を知らせなければならない。この場合、雇用者には、これら労働者が次の仕事を見つけるまでの間、生活に困らないよう、一定額の雇用助成金(Employment Assistance Payment)の支払いを義務付けるとともに、再就職の斡旋を行うことが推奨される。

 

ガイドラインは、高齢労働者の再雇用を求める一方で、再雇用にあたって雇用者がとりうる方法や賃金などの雇用条件の調整に柔軟性を持たせることで雇用者が高齢労働者の再雇用を行いやすいように配慮した内容になっており、再雇用に関する法律の施行前に、雇用者がガイドラインに沿った取り扱いを行うことを強く勧めています。

 

なお、本稿は、ガイドラインに対する意見募集を行っている12月時点で執筆されたものであり、内容が修正される可能性がありますのでご注意下さい。ガイドラインの完成版は2010年の早い段階で公開される予定です。

取材協力=Kelvin Chia Partnership 濱田 和成

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.159(2010年01月01日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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