2025年2月7日
Q.社会保険料に関するシンガポールでの税務上の取り扱い
目次 [非表示]
Q1. シンガポールでは、社会保険料について、個人の税務申告上どのような取り扱いがなされるのでしょうか。
A1. シンガポールには、日本の社会保険に相当する制度として、「中央積立基金(CPF)」という制度があり、シンガポール国籍および永住権を有する被雇用者に対して、従業員および雇用主の双方が賃金の一定割合をCPFに納付する義務があります。この法律で定められた拠出率に基づくCPFの納付については、個人の税務申告において、従業員が納付した金額は所得総額から控除され、雇用主が納付した金額は免税となります。
一方、駐在員など労働ビザを取得してシンガポールで就労する外国人はCPFの対象外とされており、任意で加入することもできません。そのため、これらの外国人は、シンガポールでの税務申告において、CPFについて申告することはありません。
Q2. 弊社の駐在員は、給与の一部を本社が日本で支給し、シンガポール在任中も日本で社会保険料を納付し続けていますが、これらの社会保険料について、シンガポールの税務申告ではどのように取り扱われるのでしょうか。
A2. シンガポールで就労する従業員に関して、シンガポール国外の年金基金などに納付された拠出金は、従業員の雇用所得の一部としてシンガポールで申告する必要があります。駐在員について日本の本社が納付する社会保険料や年金基金などに拠出した金額は、当該従業員に関する現物給付と見なされ、シンガポールで課税対象となります。また、従業員の給与から天引きされた社会保険料については、シンガポールのCPFと同じような所得控除の適用を受けることはできません。
ただし、2024賦課年度(2023年の所得)までは、以下の2つの要件を全て満たす社会保険料に限り、シンガポールでの課税が免除されていました。
1)当該従業員の本国政府が管掌する社会保障制度に基づく拠出であり、法令により国外で就労する従業員についても拠出が義務づけられていること
2)当該支出について、シンガポール国内の会社または恒久的施設が費用を負担したり、税務上の損金として取り扱っていないこと
上記の特例措置は、2025賦課年度(2024年の所得)より廃止されました。そのため、これまで特例措置の適用を受けて雇用主が負担する社会保険料について申告していなかった会社も、今年からは忘れずに申告する必要があります。
Q3. 日本の本社が納付する社会保険料は全て申告しなければならないのでしょうか。
A3. 対象となる社会保険料は、納付によって従業員本人が利益を得るものと考えられています。日本の社会保険料の中では、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料がシンガポールで課税の対象となります。一方、労災保険料はシンガポール国内法で免税とされているため、国外の労災保険料についても同様の取り扱いとなります。また、子ども・子育て拠出金は、生涯独身や子どもがいない世帯の従業員に対しても雇用主に拠出義務があることから、納付と従業員が得る利益に直接的な関係がないため、課税対象外と見なされています。
さらに、厚生年金基金を含む企業年金や確定拠出年金への拠出は、法令による強制的な拠出ではなく、任意の拠出であるため、これまで通り課税所得として取り扱われます。