2024年7月12日
Q.社員割引の税務上の取り扱いについて
目次
Q. 弊社は、社員への福利厚生の一環として、自社製品を割引価格で購入できる制度を導入しています。シンガポールではこのような制度に関して、税務上、留意すべき点はあるでしょうか。
A. 社員割引は、従業員が雇用主と労使関係にあることにより得られる便益であるため、雇用所得の一部と見なされ、原則として課税所得になります。ただし、割引が全ての従業員に適用され、かつ割引を受けた商品またはサービスの一般小売価格がS$500を超えない場合は、免税扱いとされます。割引が一部の従業員のみに適用されたり、商品またはサービスの一般小売価格がS$500を超える場合、雇用主は、割引した全額について課税所得として雇用所得申告書(IR8AまたはIR21)に申告しなければなりません。
Q. 商品またはサービスの一般小売価格は、どのような価格を指すのでしょうか。
A. 一般小売価格は、雇用主と関連がない第三者の顧客に独立企業間価格として提供される以下の3つの小売価格のうち、最も低い金額とされています。
・希望小売価格(メーカーが小売店に対して希望販売価格として設定する価格)
・当該暦年における最も低い小売価格(航空券や宿泊施設など、季節や需給状況に応じて価格が変動する場合)
・当該暦年における最優遇顧客(VIP会員、大口法人顧客など)に適用される小売価格
上記の小売価格は、購入を希望する全ての顧客に適用される価格でなければならず、「先着何名様」など、購入できる顧客の人数に制限がある価格は、対象外とされます。
Q. 免税の限度とされるS$500の小売価格は、どの単位の商品またはサービスにかかる価格でしょうか。
A. S$500の限度額は、商品1点またはサービス1件当たりの一般小売価格を指し、商品サービス税(GST)が課せられる場合は、税込価格となります。セットとして販売されている場合は、1セット当たりの一般小売価格を指します。但し、宿泊施設または飲食に関する社員割引の場合は、1請求書当たりの税込一般小売価格を指します。
割引を受けた商品またはサービスの一般小売価格が上記の単位でS$500を超える場合、割引された全額が課税所得となります。例えば、一般小売価格S$1,000の携帯電話を社員価格S$800で購入した場合、差額のS$200が課税所得となります。
一度に購入した商品の小売価格の合計がS$500を超えたとしても、商品1点当たりの小売価格がS$500以下の場合は、課税されません。例えば、家電量販店の社員が、税込小売価格S$450の掃除機とS$350の炊飯器、S$200の電子レンジを各1点ずつ、合計S$1,000のところを2割引の社員価格S$800で購入したとしても、差額のS$200は課税所得になりません。
ホテルの従業員が1泊税サービス料込S$350の部屋に社員価格S$150で1泊した場合、差額のS$200は課税所得になりませんが、2泊した場合は一般価格がS$700となり、S$500を超えるため、S$700と社員価格S$300の差額のS$400が課税所得となります。
社員割引制度を導入している雇用主は、課税所得の有無を確認し、ある場合は正しく申告できるように、適用した割引の明細を社員別に記録しておく必要があります。