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シンガポールEYE

2008年5月19日

沖縄発のおもてなしの心と食文化、「En」が世界を繋ぐ

エン・ホールディングス社 ディレクター レイモンド・ンーさん

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シンガポール初の沖縄風居酒屋のコンセプトで、2000年にUEスクエアにオープンして以来、「En」は在星日本人で知らない人はいないという位、頼もしい存在となっている。沖縄独特のおもてなしの心意気はそのままに、モダンにデザインされた店内、そして居心地のよい屋外のテーブルは、今や在星日本人に限らず、多くのリピーター客でいっぱいになる。そんな「En」のディレクターで創業者が、沖縄育ちの香港人レイモンド氏であることを知る人は少ない。

 

エン社のディレクターであるレイモンド・ンー氏は、香港で生まれ、8歳から18歳までの多感な時代を沖縄で過ごした。ゆえに流暢に操る日本語、そして何よりもウチナーンチュ(沖縄の人)の人情味溢れる人との関わり方をこよなく愛している。「En(えん)」という店の名にそのスピリットを託し、シンガポールやアジアにおいて、見事にそれを再現し、人が集う場を作り上げたビジネスマンである。

 

シンガポールで活躍するトップの視点にスポットライトをあてるシンガポールEYE、第1回目は、レイモンド氏のサクセスの流儀に迫った。

 

「En」の流儀その一:宴(えん)美味しい料理と酒を囲み、集う。

 

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レイモンド氏は、アメリカの大学を卒業後、工業システムエンジニアとして就職し、香港、日本、東南アジアを経て、1996年にシンガポールへ移住した。それが当地との最初の縁だったという。「当時のモハメドサルタンのエリアには、飲みながら食事のできる店がなかったこと、沖縄出身の方々が沖縄の味を恋しがっていたことを知ったのが店を出したきっかけです。NHKの連続ドラマで『ちゅらさん』も流行っていた頃でした。」と当時を振り返る。氏の実の弟が沖縄でシェフをしていたり、その妻の実家が、長年飲食業を営んでいたこともあり、氏と弟夫妻、そして義妹の実妹を加えた4人の決心が形になるのにそう時間はかからなかった。

 

「長寿で知られる沖縄の秘密は、まさに医食同源の食文化。ミネラルの高い塩、ビタミン豊富なゴーヤ、栄養満点のラフテーなどがまさにそれです。その伝統的な食文化を紹介したかったんです。店はモダンでありながら居心地良い空間にしたくて、暖かいオレンジ色を基調に、インテリアには伝統的な沖縄の小物をアクセントに使いました。」と、氏は「En」1号店の生い立ちを語った。当初、シンガポール人のカルチャーやスタッフの考え方を理解するのに大変な時期もありましたが、としながらも、フレンドリーなサービスの良さも「En」の名物となるまでに至った。

 

「En」の流儀その二:円(えん)食の輪を世界に広げて行く

 

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そんなこだわりをもつレイモンド氏が、ビジネスマンとしてその手腕を発揮したのはシンガポールに留まらなかった。4人一組の若き経営陣は、シンガポールに続き、香港に「En」を2001年に出店、その後SARSによる経済低迷期もコミュニティーの拠り所として乗り切り、沖縄料理のファインダイニングのレストランや、泡盛と三線を楽しめるバー、鉄板焼きや炭火炉端風のレストランなど、新しいコンセプトの店舗を積極的に展開、香港には現在6店舗ある。シンガポール国内においては4店舗を出店、最近オープンした「En」の姉妹店「En Grill & Bar」は、シックなラウンジエリアと落ち着いた雰囲気の中で串焼きと鉄板焼きが楽しめると好評だ。シンガポール規格生産性革新庁(SPRING)にも有望企業として認知され、アドバイスやインフラのサポートを受けながら、国際的なスタンダードの確立を目指している。2004年にジャカルタへも進出し、今年は上海にも進出、第二の故郷である沖縄でも那覇新都心にこの7月に出店する計画があり、格別の思いがあるという。

 

円とは食の輪を世界に広げていくこと。「今後はヨーロッパ、ハワイやニューヨークなどの北米、オーストラリアにも進出して行きたいです。」と夢を語った。

 

「En」の流儀その三:縁(えん)食を通して生まれる人との絆に感謝

「沖縄の人をもてなす気持ちを心がけながら、お客様が飲んでおしゃべりして寛いでもらえる店作りを大切にしています。合コンがしばしば行われるのもそのせいでしょうか、Enで出会って結婚した方も少なくないです」とレイモンド氏は嬉しそうに語る。シンガポールを離れても当地に立ち寄る度に店を訪れる元常連も多い。

 

氏が来星した当時と比べると、「在星の日本人は全般的に年齢層も若くなり、より革新的な発想とライフスタイルを楽しむ人達が増えて来たように思う。常に変化し続けるシンガポールが、国として目指す方向にマッチしている感じがします。」と最近の日本人コミュニティーの印象を語った。「En」の客層も以前は日本人が8割を占めていたが、最近では日本人と、ローカル・欧米人がほぼ半々。日本食のレストランが急増している昨今、「食の質を理解し楽しむ層が一般的に増えており、彼らは様々なバラエティーを求めているのが現状です。我々の競争相手は、いまや日本食レストランに限らない訳です。」と今後のチャレンジを語るも、氏に焦りはない。

 

人と人との縁、そして食文化を繋ぐ縁をこれからも「En」を通して広げて行けたら、と語るレイモンド氏。「En」を通して積極的に沖縄の食や文化を海外に広めたことと、沖縄の酒や食材の産業への貢献を買われ、ビジネスパートナーの義妹は沖縄県の「新ウチナー民間大使」の任を受けて香港で活動。4月から「沖縄フェスティバル in 香港」を開催中で、6月26日には沖縄音楽のバンド・パーシャクラブと夏川りみを招いてディナーショーを行う。まさに沖縄と世界を「En」が結ぶ。レイモンド氏がこよなく愛する沖縄のホスピタリティーが、「En」を媒介として世界に通用することが実証される日もそう遠くない。

 

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この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.122(2008年05月19日発行)」に掲載されたものです。
文=桑島千春

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