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新規進出企業レポート

2019年7月25日

輸出入・通関業務システム「TOSS」 トップメーカーのBINAL 創立40周年を迎え、グローバル展開を加速


 
  国際物流システム最大手のバイナルが、2019年3月にシンガポール現地法人を設立した。1970年代後半、それまでタイプライターで行っていた貿易通関事務処理を劇的に変えた輸出入貿易ソフトを開発。以来改良を重ね、通関業務に関わる者たちに欠くべからざるツールとなり今日に至る。現在のユーザー数はのべ7,050社。今年5月には独SAPの「ピナクル・アワード2019」で日系企業唯一の受賞を果たした。全ての貿易業務に関わるプロフェッショナルへ提案する「TOSSシステム」をひっさげて、堂々のシンガポール進出である。
 
 膨大な量の書類作成、その煩雑極まる手続き。貿易に関する様々な手続きを手作業で行っていた時代に、コンピューターの専門ソフトに入力してINVOICE やPACKING LISTを自動作成できるよう開発されたのが「TOSS」システムだ。
 1970年代後半、当時の日本はパソコンが徐々に普及し始めた頃。事務機器の販売をしていた同社前身の「岡本商会」は本業の傍らコンピューターの時代到来を予見しパソコン教室を始めた。当時はワープロもなく、タイプライターでのドキュメント作成で、1文字間違えれば全て一からやり直し。きっかけは、その時教室に来ていた貿易業務に携わる生徒で、「コンピューターになれば、情報を消したり追加したり自由にできるようになる」というぼやきをヒントに現顧問兼開発者の松田憲明氏が製品化に取り組んだことである。そして1983年に「TOSS」システムを商品化。これが爆発的な売れ行きとなる。「フリータイピングでどこにでも入力できるロジックを作るのに非常に苦労したようです。まだウィンドウズもない時代」と、今年3月に当地へ赴任した代表の青山慎司氏は語る。
 輸出立国で高度成長期時代を駆け抜けた80年代。そして90年代初頭、バブルと共にはじけ散った同業他社を尻目に、貿易業務に特化した製品だけを一貫して作り続け、確かな技術と専門性の高い営業マスターの相乗効果で業界における確固たる地位を築いた。「データはデータとして保存、文字は文字で自由に入力できるよう、マルチ画面で表示する。開発を重ね、今日のような貿易業務の管理システムや通関業者向けのシステム、そしてそれらに付随するオプションで構成されたパッケージシステムとなりました」(青山氏)。
 

TOSSシステム一本で勝負をかけた
オーナーの先見性

 
 大手企業からの引き合いが増えたのが今から15年前。「通常、各社独自の基幹システムで販売や生産、在庫管理を行いますが、メインシステムのカスタマイズにはかなりの費用が掛かる。このシステムと基幹システムをインターフェースさせる事で、データをワンストップ、かつ、シームレスに処理できるようになります」(青山氏)。特に通関業務は各国の税法によって書類の書き方や表記する内容が様々。ワンクリックでインボイス作成ができるようになったのは画期的だった。「INVOICEを様々なバリエーションで基幹システムから出せなくて、今でもEXCELで処理されているところが多い。基幹システムで全部管理しているつもりでも、こと貿易取引はオフラインでやっている状態で、二度手間です」(青山氏)。ニッチなニーズをカバーしたことが奏功したのである。
 現地法人設立の決め手は、2018年11月に開いたセミナー。現地法人からの引き合いが相次いだことによる。「世界中に貿易取引があり、その業務に携わるプロがいる。彼らに選ばれるモノ作りを可能にしたのは、私たちが貿易業務のエキスパート集団だから」(青山氏)。貿易業務のニーズは分かりにくい。でも、「私たちは営業も開発者の人間も全員システムエンジニア。顧客が欲しいものを先取りして提案できる」と言い切る。
 2001年に中国へ進出も、近年、同国のビジネスを取り巻く環境には陰りが。そこで世界が注目するASEAN地域。バイナルもその波に乗った。「ゆくゆくはローカル企業にも攻勢をかけていく。シンガポール政府はデジタライゼーションの振興を推し進めていて、ことに通関業務の電子化は動きが加速していますから」(青山氏)。
 また、2019年5月には独SAP社主催の「ピナクル・アワード2019」を受賞。SAP社のデータベースソフトをTOSSの推奨データベースソフトに抱き合わせた貿易業務システムが評価された。全世界のSAP社取引企業18,000社のうち、優れた成績を収めた30社に贈られるもので、IBM、LENOVOやDELL、アクセンチュアに並び、日系企業では唯一の受賞。「100名足らずの会社ですが、世界での知名度が一気に上がった(青山氏)」と嬉しさを隠せない。
 

「いいモノづくりは、
作り手を大事にすることから」

 
 環境スローガン「私たちにやれること―まずやってみよう」を掲げ、2013年にはソーラー発電事業を開始。三重県に4ヵ所、各約1,500坪の太陽光発電所の一部建設を社員全員で行った。2017年12月の時点で総発電量130万kwhを達成。一般家庭およそ42万5千世帯(名古屋市内の世帯数の約4割)の1時間分の消費電力を確保できる量である。
 「オーナー企業だが、うちのシステムと同じで“壁”がない。“見聞を広めよ”の社長命で、すでに社員約80名が来星しています」(青山氏)。社員一人一人を紹介した同社のHPも社長の岡本が作った。「ウィットにとんでいます。あそこまで作り上げるのはなかなかです」と師を仰ぐ。このオーナーにして、この会社あり。「人」ありきのモノづくりで、世界の檜舞台を闊歩する。戦うバイナルの、今後の活躍を大いに期待したい。

 

プロフィール
青山 慎司(あおやま しんじ)
 
BINAL Asia Pacific (SG) Pte. Ltd.
The Central 6, Eu Tong Sen street 08-14 S059817

URL:https://www.binal.co.jp

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.348(2019年8月1日発行)」に掲載されたものです。

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