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ビジネスインタビュー

2012年5月7日

くつろぎのあるヘアサロン「CLEO」が シンガポールの美容業界に新風を吹き込む

CLEO HAIR International オーナー 笠原正史さん

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「シンガポールにいる皆さんへ、日本の行きつけヘアサロンと同等のサービスと技術を提供します」とCLEO Hair Internationalのオーナー笠原正史氏はいう。日本への一時帰国や出張を待って、髪を切りに行くという在星日本人が案外多いことを知ってのことだ。

 

2011年11月、海外出店の可能性を探るという自らのミッションのもと、初めてシンガポールの地に立ち、街の空気や人との出会いを通して、シンガポールを選んだ目算に間違いないと実感した。そこから今年4月20日「CLEO Hair & Make(クレオ)」をマリーナ地区のパルコ内にオープンするまでの5ヵ月、実現のために何度もシンガポールへ足を運び、開業へ至った。そのスピードと実行力を持つ笠原氏は、アントレプレナーの気概に満ちている。

 

 

美容ビジネスは、教育産業という発想

シンガポールでは、どんなファッションブランドも手に入るし、美容に対する技術や考え方も進んでいるのに、おしゃれをしている人の約9割を見て、髪型だけが“いけてない”という印象を受けた笠原氏は、とてももったいないと感じたという。

 

「もちろん、シンガポールに日系の美容室はあります。ただ、日本にも同じ経営者の美容室があって、当地に出店しているケースはほとんどない。高度な要求への対応が必要な日本の市場で取り入れられている良いものや新しい技術を、こちらへタイムリーに持ってくることに勝算があるはず。我々がそうすることで、美容業界に新たな競争が生まれ、ファッション業界の底上げに繋がる流れがつくれれば」と語る。

 

実際、日本のクレオ南青山店で人気のある炭酸スパと炭酸トリートメントは、シンガポール店の開店時から即取り入れた。これは、もともと医療の現場でも使われていた炭酸ガスの成分と性質を活かして、髪本来のph(酸性、アルカリ性の程度)を取り戻し、血行を促進して細胞の代謝を高め、髪と地肌を内側から美しくするというもの。また、シャンプーでは落ちにくい頭皮や髪の汚れを取り除き、トリートメント効果も高めることができる。

 

「シンガポールの水、食べ物に使われている油などが髪にはあまり良くないようで、髪が痛んで頭皮が汚れやすいようです。まずは清潔に保つこと、髪の問題には早く手を打つこと」が大事だと毛髪診断士の資格も持つ笠原氏はいう。炭酸トリートメントは、業界でシンガポール初の導入となり、施術後、見違える手触りやツヤを取り戻したと顧客からの評判も上々だ。

 

笠原氏は、美容ビジネスは教育産業だと言い切る。もともと人材育成を得意とするという氏だけあって、常にどうしたら相手に喜んでもらえるかというポイントで後進を指導するという。つまり、カットやカラーという技術はあくまでも手段であり、日本でもそれらの技術はしっかり教えるが、その使い方を十分教えていないという現状がある。もちろん、あらゆる判断が関わり、個々の人間性が大きく左右する部分なので、自分で学習できる環境を十分に用意することも大事だという。

 

美容師として別のサロンに勤務していた頃、海外で仕事をした経験が自分の大きな糧になっていることも、海外拠点を持つ動機になったという。若手はもっと外に出て経験を積むべきという考えと、「私の店に限りませんが、オーナ−の自分が日本の店にずっといると、指名が集中して若手が成長の機会に恵まれないこともある」という。一度自分を指名した顧客は次回も自分を目当てに来店し、なかなか若手の出番がないというのだ。

 

「実際、私が日本を離れて3週間程経ちますが、店の売り上げはほとんど落ちていない。つまり若手がしっかり育っていて、店を切り盛りできるという訳です」という。そんな信頼と実力があってこそ、お互いが次の段階に進めるという好循環が生まれる。その一方で、当地の美容師の雇用形態には疑問を感じている。

 

「ほとんどの日本人美容師は、ここでは個人契約が多い。顧客がついたら点々と店を変えて行く。自分本意の雇用形態ですから、周りのスタッフを育てようという気持ちが少なくなってしまうのが残念」というのだ。笠原氏の疑問は、今後シンガポールの美容業界の慣習に一石を投じることになるだろう。

 

 

「CLEO」海外第1号店を開業、そしてその先へ

経営者として、シンガポールで無事にスタートを切った笠原氏。まだ広告展開などに本腰を入れる前とはいえ、口コミを通して少しづつクライアントが店に来てくれるようになり、ほっとしていると笑う。CLEOのサービスをトータルで体感してもらえるよう、現在はカットやカラーなどの施術に炭酸スパとトリートメントを組み合わせた4つのパッケージに絞りこんだメニューを展開している。

 

「美容室は、いわばサロンとして皆さんにくつろいで頂く社交場のようなもの。リラックスしてここでの時間を楽しんで欲しいです」と語る。サロンのインテリアはもちろん、椅子やシャンプー台は日本から持ち込み、ワンランク上のサロン体験ができるよう気を配っている。

 

今後シンガポールでのビジネスを始めることを考えている人たちへのアドバイスを聞くと、「やろうと思った時に、まず自分が動けば周りがついてくるということ。動くからこそ、人に出会えるし道が開けてくる。そこで感謝の気持ちを忘れずに、自分もできることを返していけば、必要なリソースを持った人が集まってくれます」との回答。この5ヵ月間で、シンガポールで出会った人は200人を超える。

 

シンガポール現地で会社設立を進める上で、従業員のビザの取得などスムーズにいかないことはあったものの、ビジネスの立ち上げに関しては、「ジグソーパズルのピースが1つ1つはまっていく」ように物事が進んだと振り返る。また、シンガポールでのヘアサロン経営は、特に複雑なライセンス取得や手続きが必要ないことにも驚いたという。

 

笠原氏の今後のビジネスプランには、海外への出店を含めた一層の拡大が盛り込まれている。来年に向けて、シンガポールにもう1店舗、マレーシアに美容学校の設立、ヘアサロンの出店を考えている。ヘアサロン内には、日本人、現地スタッフ両方が混在するようにしながら、国籍を問わず、自分が育てる若手に様々な環境を経験させたいと抱負を語る。

「新しいことをどんどん取り入れたり、考えることが好き」という笠原氏は、その先を見据えて既に動き始めている。

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笠原正史

新潟県出身。父が理髪師、母が美容師でそれぞれが理髪店と美容院を営む環境に育つ。「男が一生続けられる仕事は床屋だ」という父に習って理髪師になる学校へ進むが、その後、経営者になるために美容師の資格を取る。独立後、2009年8月、東京・南青山に「美容室 CLEO hair&make(クレオ)」を設立。7歳と5歳の2児の父。

CLEO HAIR International
9 Raffles Boulevard Parco Marina Bay Millenia Walk Singapore 039596
TEL:6338-5250(11:00〜21:00、無休)

9 Raffles Boulevard Parco Marina Bay Millenia Walk Singapore 039596

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.211(2012年05月07日発行)」に掲載されたものです。
取材=桑島千春

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