シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP特集 – 新元号がやってくる – 改元シ...

ビジネス特集

2019年3月22日

特集 – 新元号がやってくる – 改元システム、 あなたの会社は大丈夫?

2019年4月30日で「平成」の時代が終了し、同じ年の5月1日から新元号が始まります。昭和から平成への切り替えを経験した企業には、当時、情報システムの改元対応をその時にすませたからと楽観しているところも多いかもしれません。企業で情報システムを利用しているのであれば、改めて自社の情報システムを見直す必要があります。
2019年の改元に向けてどのような情報システム上のリスクが考えられるのか、またいつまでに何が必要かを整理して、確認しておくべき事項をまとめました。

 

改元に向けてどのような情報システム上のリスクがあるか?

 ●リスク1

2019年は、4月30日まで平成で5月1日から新元号と、1年間で2つの元号が混在する年となるため、業務システムの処理によっては不具合が発生する可能性があります。例えば多くの業務システムでは「2018年=平成30年」と、西暦と元号を1対1のテーブルで持ちますが、2019年は、「2019年=平成31年」と「2019年=新元号1年」の2つのデータを持ち日付によって判定する、もしくは、「2019年4月=平成31年」「2019年5月=新元号1年」とするなど、何かしらの変更を加えなければデータの不整合が起こり得えます。

 ●リスク2

新元号の公表は1カ月前の4月1日とされており、システム改修をする期間は1カ月しかありません。元号の変更は、生年月日などの個人情報や、行政や金融機関が保持するデータにも影響があると考えられ、情報システム不具合による損害発生を防ぐために、システム改修後の確認作業も十分に行う必要があります。

 

しかし、慢性的な人手不足が続くIT業界において、技術者が抱える負担は増加しています。開発者がシステム改修対応を行えたとしても、十分な確認や検証が行えず、不具合を残したまま公開してしまう危険性をはらんでいます。

 

特にミスが許されない金融機関はしっかりとした対策と準備が必要です。

 

金融系システムは国内外、他金融機関などとつながった巨大なシステムとなっています。自社のシステムは問題がなかったとしても、他で一部のシステムが古く、年号でデータが来るものがあるかもしれません。そのデータがやりとりされた結果、自社のシステムに影響が出ていないかどうかはSE・開発側だけでは気付けないものもあります。そこへ、新元号がどういった内容で来るかの仕様(書)が、新元号が決まるまで仮の状態であると、期間が短い分、他社のシステムでどんなミスが起きるか予想が難しく、指摘する時間も限られています。

 

何をいつまでに変える必要があるのか?

このような元号変更によるシステム上のリスクを回避するために、何から始め、そして、2019年5月1日までにシステム対応を間に合わせるにはどう対応計画を考えればよいのか。一般的な改元システム対応スケジュール例を紹介いたします。

 

システム影響範囲調査とテスト

確認したいのが、契約管理や受発注管理、人事管理、会計系のシステムといった業務システムです。Webサービスを提供する企業であれば、生年月日など会員データに和暦を使用していないかを確認する必要があります。また、業務システムだけでなく、自社のホームページに和暦を使用する箇所が無いか確認する必要があります。

 

対応作業の多くを占めるのが、事前の影響範囲調査とテストでしょう。対応箇所さえ正確に洗い出しができれば、あとは該当箇所に必要な手直しを加えればよし。西暦和暦の自動変換処理を実装する場合は、パラメータを追加するだけで対応できるケースもあります。しかしスムーズな対応を行うには事前の影響範囲調査と事後の検証テストには時間をかけることが不可欠です。

 

和暦使用箇所の洗い出しにおいて盲点となりやすいのが、「平成31年2月~平成31年7月」など、元号をまたいだ期間を動的に表示する箇所です。2019年5月1日より元号が変わるため、サービスの利用可能期間やキャンペーンの有効期間表示など、元号をまたぐ期間を表示する箇所がないかどうかも確認するべきです。

 

対応後のテストも長く見積もる必要もあります。広範囲にわたって対応が必要なものはテストだけで1カ月以上を要する場合も。対応箇所が少ないシステムであっても子会社やパートナー企業とデータを連携させるシステムの場合は、連携先のシステムで不整合が起きないかどうかもテストフェーズで確かめる必要があります。連携先のシステム担当者と新元号対応の方法についてよく確認を取り合い、矛盾が起きないようなデータ形式やプロトコルで連携を図ることが必要です。

 

このように、事前の影響範囲調査と対応後の確認(テスト)には多くの時間を要するため、情報システム担当者やエンジニア、部門責任者などスタッフのスケジュールを事前に押さえた上で、綿密に対応計画を組むことが重要です。今からでも遅くはありません。システムへの影響がないか今一度確認してみましょう。

 ●補足情報●
大方針として日本経済産業省から各業界団体に向けて、改元に伴う情報システム改修等への対応は次の通りです。

 ●情報システム改善等の対応●
1 )元号をデータとして保有している場合、元号データの変更や追加また西暦データへの変換対応
2 )帳票やシステム上に元号や「元年」を印字、表示している場合、印字、表示内容の変更
3 )西暦と和暦との変換処理を行っている場合、変換ロジックの変更または変換テーブルへの登録修正
4 )他の事業者や関係機関のシステムと情報連携している場合、当事者間でのシステム対応策の確認や協議を行う。

 ●事務・運用面の対応●
1)元号の記載が含まれる契約書、帳票等の記載の変更
2)旧元号が記載された状態で利用が想定される契約書や帳票等の対応
3)顧客に影響が生じる事項への対応策に関する顧客への十分な周知対応

 

川辺 高峰 (Kawabe Takao)
Managing Director KAWATEC PTE LTD

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.344(2019年4月1日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP特集 – 新元号がやってくる – 改元シ...