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ビジネス特集

2018年7月28日

シンガポールの人気ECサイトとストア開設

大きく異なる販売手数料、注目の物流サービス動向

では、BtoCを前提にオンラインストアを開設したい場合、どのようにサイトを選ぶのが良いのだろうか。ここでは、主要2サイトすなわちショッピングモール型の「Qoo10」と、Amazon型の「Lazada」の特徴や店舗開設要件を比較しながら考えてみたい。【図2】

 

オンラインストア開設にあたって、まず気になるのは費用である。シンガポールの会社法や会計基準の監督官庁であるACRA(Accounting and Corporate Regulatory Authority)への登記手続きの有無が分かれており、Lazadaの場合は登記手数料315SGD(約2万6,000円)程度をACRAに支払う必要がある。一方、Qoo10は登記不要であり、もちろんACRAへの手数料支払いは必要ない。ただ、Qoo10自体がセットアップ手数料100SGD(約8,200円)を求めており、この支払いは必要になる。

 

セットアップ手続きに関して付言すれば、LazadaはACRAへの手続き(オンラインで完了できる)に加え、セットアップ可否の審査に一週間程度かかると言われており、Qoo10に比べると少し手間がかかる。こうした点からLazadaの方が参入要件はやや厳しいとも言えるが、実務面にはほとんど差がないといって良いだろう。

 

一方、販売手数料率に関しては大きな開きがある。全体の利用者数は明らかにQoo10の方がLazadaより多いが、この料率をどう考えるかは開設者の判断になる。

 

また、大きな違いとして在庫管理がある。Lazadaは、シンガポールの配送センターに商品の在庫を備えておく必要がある。そして配送業務はLazadaが担うため、配送手数料が掛かるものの、自社で物流人員を確保する必要はなくなる。対してQoo10は独自の物流施設を持っておらず、配送は各社がそれぞれ行う。

 

ただ、Qoo10では、Qストア会員になる(別途会員料が必要だが販売手数料率は下がる)と、インドネシア、マレーシアなどQoo10の他国サイトにも商品が掲載されるので、販路を広げることはできる。

 

商品宣伝力や周辺国への展開などについては、何を、どこで、どの層に売りたいかという各社商品販売戦略との相性によって評価も別れてくるが、いずれにしても在庫管理・配送サービス面に関しては、両サイトに限らず各プラットフォーム運営事業者が今後も大きく投資し、体制を強化していくことが予想され、引き続き業界動向に注目していく必要がある。

 

 

ストア開設、将来性も踏まえてプラットフォーム選びを

シンガポールでのECサイトは一般的に、ユーザー数が少ないものは店舗開設が容易であり、スケールが大きくなると要件がやや複雑化してくる傾向がある。ただ、Qoo10とLazadaの比較からも分かる通り、いずれを選ぶにしても開設費用自体は少額であり、手続きは簡単だ。オンラインストア開設にあたっては、目先のことはあまり気にする必要がないといえそうだ。

 

では、どこに注目するべきだろうか―。プラットフォームの新規進出、合従連衡、あるいは淘汰は今後も続くと見られる。とりわけAmazonの動向は、市場に劇的な変化をもたらす可能性を秘めている。シンガポールでのオンラインストア開設にあたっては、EC業界の動向も踏まえ、プラットフォームの将来性も見据えながら、自社の商品群にマッチしたサービスを選ぶことが大事だといえそうだ。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.336(2018年8月1日発行)」に掲載されたものです。取材・文: 竹沢 総司

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