シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOP第2回 やっぱり、人の辞める会社はよくない

中小企業のための 勝つ!組織のつくり方

2018年6月29日

第2回 やっぱり、人の辞める会社はよくない

たまに、上にいる人たちは結構優秀なのですが、人のマネジメントというか、そういうのがあまり上手くなく、新人が入ってきては辞め、入ってきては辞めで、いつの間にか5年経ち、10年経つと、上層部の人間たちはそんなに代わり映えがなく、下を見たら勤続数年の人間ばっかりで、真ん中がすっぽり抜けている、というドーナッツ組織を見ます。

 

特に仕事の厳しい業界には、このパターンが散見されます。結局、いま何を食べたり、飲んだりしているかが、人の体の5年後、10年後をつくるのと一緒で、いまどんな人材を雇い、どんな教育をしたのかが、その会社の5年後、10年後をつくるので、長期的視野に立って人を育てることを怠った会社は、やっぱりあとで痛い目に合います。

 

仮に、上位の10年選手の頑張りで右往左往しながら何とかなったとしても、だんだん組織が疲弊してきます。いつまでたっても部下を育てられないでいると、10年選手である、その人たち自身の地位も給料も頭打ちにならざるを得ません。

 

仮に、ずっと同じ構造で、しかも上位層の数が増え、モチベーションを下げないために役職や給料だけ上げていくと、人件費の高騰を招くので、役職に応じた給料を払えなくなるなど、結局あまり恵まれない環境になります。

 

更には、プレイングマネージャーの域を脱することができず、ずっとプレイヤーで同じ仕事を繰り返していれば、マンネリも起これば、人や組織が疲弊してもおかしくありません。

 

人は会社を辞める時に、自己正当化や、会社や同僚への配慮でもっともなことを言って辞めていく場合がありますが、以前、ある雑誌の「退職をした本当の理由は?」というアンケートに対して
今の会社にはもう学ぶものがなくなった
今の会社に大きな不満があるわけでは ないがつまらない
今の会社は誰も何も教えてくれず、ほったらかしだった
という回答が最も多かったそうです。

 

では、人が辞めない会社というのは、これらをひっくり返せばいいわけですから、
いろいろ勉強になって自分を成長させられる環境がある
どんどん権限委譲してくれて、ワクワク・ドキドキするようなエキサイティングでおもしろい仕事をさせてくれる
いろいろな人がコミュニケーションをとりながら、いろいろなことを教えてくれる
という結論になるのではないでしょうか。

 

どうですか?こんな会社だったら、人は辞めないと思いませんか?

 

「大きな声じゃ言えませんが退職理由のホンネランキングベスト10(リクルート調べ)」というアンケートでは、第1位は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」だったそうです。人が辞めない会社をつくるには、リーダーが仕事の仕方を見直す必要がありそうですね。

 

私の主催するリーダーズアカデミーでは「人の育つ(やる気の出る)5つの環境」というお話をします。それは、採用・適正配置・リーダー・教育・評価です。

 

要するに、必要(優秀ではない)な人材を採用し、強みの活きる仕事(場)を与え、部下を成功させるために一生懸命になってくれているリーダーがいて、能力を伸ばす教育を与え、報いる評価を与える。これが、人が辞めない会社の秘訣だと考えています。ぜひ、日々考え、制度、評価など、あらゆる面を見直して、人の辞めない会社をつくってほしいと思います。

 

プロフィール
嶋津 良智(しまず よしのり)
・一般社団法人 日本リーダーズ学会 代表理事
・リーダーズアカデミー 学長
・セミナーズアカデミー 学長
・早稲田大学 エクステンションセンター講師

日本唯一の『上司学』コンサルタント。大学卒業後IT系ベンチャー企業に入社。同期100名の中で最年少営業部長に抜擢され、就任3ヵ月で担当部門の成績が全国No.1に。28歳で独立、2004年5月株式上場(IPO)を果たす。業績向上のための最強の組織づくりをノウハウ化した独自プログラム『上司学』が好評を博し、世界15都市でビジネスセミナーを開催。シリーズ100万部のベストセラー「怒らない技術」をはじめ、著書累計150万部を超える。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.335(2018年7月1日発行)」に掲載されたものです。

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