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法律相談

2017年10月2日

Q.私は日本企業のシンガポール現地法人A社の駐在員で、Employment Pass(EP)の上でもA社が雇用主となっています。このたび、A社は、ASEAN諸国への投資のためにシンガポールに子会社B社を設立することになり、私がB社の取締役に就任する予定ですが、就労ビザ上の問題はないのでしょうか。

EPホルダーの他社取締役への就任について

A: EPホルダーがEP上で雇用主とされている会社以外の会社の取締役に就任する場合、シンガポール人材開発省(MOM)の同意が必要とされており、MOMから同意書(Letter of Consent、LOC)の交付を受ける必要があります。※上記のルールは、MOMが2016年11月7日にウェブサイトで公表したものです。

 

Q:MOMは、申請さえすれば常にLOCを発行してくれるのでしょうか。LOC発行のための条件があったら教えてください。

A: MOMによると、EPホルダーが他社取締役に就任することについてLOCを発行するのは、一般的に、①EP上の雇用主と他社との間に資本関係がある場合か、または、②他社取締役への就任がEP上の雇用主における業務と関連している場合と説明されています。そのため、EP上の雇用主との間で資本関係や業務上の関係がない会社の取締役に就任しようとしても、MOMがLOCを発行しない可能性があります。

 

Q:MOMに対してLOCを申請するための手続きについて教えてください。

A: MOMのウェブサイトからフォームをダウンロードし、必要事項を記載します。記載事項としては、EP上の雇用主におけるEPホルダーの職務内容や、同上の雇用主と他社との間の資本関係などがあります。フォームの完成後は、MOMのウェブサイトのiSubmitから提出します。結果は、約5週間後、MOMから電子メールによって連絡されます。

 

Q:当社の投資プロジェクトのスケジュール上、私はただちにB社の取締役に就任する必要があります。5週間も待てないのですが、この期間は短縮できないのでしょうか。

A: LOCの申請時にMOMに対して事情を説明し、LOCを通常より早く発行するよう依頼することもあり得ますが、MOMがそのような依頼に応じる保証はなく、期待すべきではないと思われます。そのため、EPホルダーが他社取締役に就任する予定がある場合には、余裕をもったスケジュールを組む必要があるといえます。

 

Q:先に他社取締役に就任し、あとからMOMに対してLOCの申請をすることは可能でしょうか。

A: MOMのウェブサイトによると、まずはLOCを取得すべき旨が説明されていますので、LOC取得前に他社取締役に就任すべきではないと考えられます。なお、本ルールの公表前に他社取締役に就任していたり、公表直後に本ルールに気づかずに就任していた場合、事後的に申請してLOCの交付を受けている事例も見られますが、今後は違反になりかねませんので、LOC取得前に他社取締役に就任することは避けるべきです。

 

Q:EPホルダーが本ルールに違反して他社の取締役に就任した場合、罰則はありますか。

A: MOMのウェブサイトでは本ルールに違反した場合の罰則について明示されていません。もっとも、違反が発覚した場合には、EPを失効したり更新できなかったりといったリスクも否定できませんので、注意する必要があります。

 

Q:EPではなく、S PassやWork Permitの保有者による他社取締役への就任についても、EP保有者と同様に考えればよいのでしょうか。

A: S PassやWork Permitの保有者は、シンガポールにおいて会社の取締役に就任することがそもそも認められていません。

取材協力=ケルビン・チア・パートナーシップ法律事務所 清水 洋介

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注:本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別のケースについて正式な助言をするものではありません。本記事内の情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。


この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.326(2017年10月1日発行)」に掲載されたものです。

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