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シンガポールで実践!英語プレゼン

2017年8月25日

海外赴任マネージャーとしての効果的なプレゼンテーション

~『鳥の目』『蟻の目』戦略で、現地社員とつながろう~

シンガポールで働いている人の中には、マネージャーとして現地スタッフのマネジメントをどうするか、悩んでいる人は多いのではないでしょうか?そういう人こそビジョンや事業戦略、事業計画などを彼らに伝えるプレゼンを最大限活用してほしいと思います。ただし、この機会を効果的に生かせていない人が多いのも事実です。

 

例えば、数字の羅列オンリーのプレゼンをしてしまう。聞き手は「あとで資料を見ればいいんでしょ?」とばかりに退屈している。あとは、本社の方針をただ英訳しただけのプレゼン。自分の言葉で話しておらず、まるで魂がこもっていない。これでは社員がモチベートされ、仕事にコミットしてくれる状況には程遠いでしょう。この問題を解決するには、事実を伝えるのでなく「感情に訴え、聞き手とつながる」ことにフォーカスするのです。具体的には、『鳥の目』『蟻の目』両面からのアプローチがお勧めです。

 

まずは、『鳥の目』から。より高い視点からの話をすることで、自分の仕事の意義をより強く感じてもらうのです。まさにこれを実践した、海外でも有名な大経営者・松下幸之助さんの例をご紹介します。

 

その昔、電球を布で磨く仕事をしているある従業員に向かって、こう言ったそうです。「君たちが電球を磨くことで、町の街灯に明かりがつく。そのおかげで、怖い思いをして暗い夜道を歩いていた女の人が安心して家に帰ることができる。夜、暗くなってしまうと、絵本を読んでもらえなかった子供も、君の磨いた電球が灯ることで、引き続き絵本を読んでもらえる。そう考えると、君たちはたくさんの人を助け、幸せにしてる。ほんまええ仕事してるな~」と。

 

ここでのポイントは、従業員に高い視点と大きな絵を示し、社会的意義と仕事をつなげることでハートを動かすこと。マネージャーならではの価値を出しているとも言えます。

 

もう一つは『蟻の目』です。一言で言うと、彼らの目線まで降りるということ。現地のスタッフは得てして「マネージャーは現場のことがちゃんと見えていないでしょう?」と冷めた目で見ているもの。だからこそ現場感を醸し出すのが大事なのです。プレゼンにおいて一番いい方法は、従業員の行動や言動を引用することです。

 

ある精密機械メーカーのマネージャーのプレゼンの例を引用しましょう。彼曰く、「われわれは今、変革の時期を迎えている。受け身の営業でなく、こちらから顧客の解決策を提案していくソリューション営業を推進する必要がある」と。

 

この後が秀逸でした。部下の1人であるAndyの例を引用したのです。「Andyは、X社から相談を受けたとき、安易な製品提案に飛びつかず、まずは一度持って帰ってチームメンバーに相談した。その上で、X社の期待を超えるレベルの『経営課題を解決するための大がかりな提案』にして提出、先方から高く評価された。先日、X社のMr.xxxに会ったらいたく感動していたよ。Andy、すごいじゃないか!みんなもこの行動をぜひ見習ってほしい」。その瞬間、聞き手みんなが笑顔になり、場の空気が一気に和んだとのこと。もちろん、ここまで大がかりなエピソードを語らなくても大丈夫です。大事なのは従業員の実名を出した上で語ってあげること。そうすると急に親近感がわき、スタッフと感情的につながることができるものです。

 

『鳥の目』『蟻の目』の両面から訴求することで、従業員のハートを鷲掴みにするプレゼンにチャレンジしてみましょう。

 

本コラムの著者西野氏からのメッセージビデオはこちらから。

 

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プロフィール
320web_Nishinosan_130623_1西野 浩輝 マーキュリッチ株式会社 代表取締役 Chief trainer

米テンプル大 Executive MBA(経営学修士)、大阪大学大学院 工学科専攻修了。リクルート在籍中に部門初のMVPに2度輝くなど、トップ営業として活躍。その後、世界最大の教育コンサルティング企業アメリカン・マネジメント・アソシエーションにヘッドハンティングされ、4年半トップ営業であり続けた。2003年にプレゼンテーション専門のコンサルティングを行うマーキュリッチを創業し、10数年に渡って5万人近いビジネスパーソンを指導。一部上場企業の経営者から新人まで対象層は幅広く、顧客数は300社を超える。「プレゼン力はフィードバック力」のコンセプトのもと、受講者の分析力・フィードバック眼を鍛えることを通じて、短期のトレーニングで成果を実現する。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.325(2017年9月1日発行)」に掲載されたものです。

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