2017年5月31日
チャンギ国際空港の開発最前線
STBによると、2016年にシンガポールを訪れた外国人旅行者は1,640万人と過去最高を記録した。シンガポールを訪れる観光客が増える中、チャンギ国際空港が観光産業に果たす役割もこれまで以上に大きくなっていると言えるだろう。同空港の拡張についての展望や、観光産業を発展させていくうえでの方針について、CAGのリン・ミン・クーン氏とSTBのジャクリーン・ニン氏に話を伺った。
空港は、もはや目的地に行くためだけの施設ではない
―チャンギ国際空港ではさまざまな拡張プロジェクトが進行中です。今後、旅行客の利便性はどのように高まっていくのでしょうか。
利用客の増加に対応するため、現在チャンギ国際空港では第4ターミナルやジュエルの建設のほか、第1ターミナルにおける到着ロビーや手荷物受取所の拡張など、さまざまなプロジェクトを計画しています。
ジュエルが完成し空港内の施設が充実することで、旅行客はアーリーチェックインも活用してより快適な乗り継ぎ時間を過ごすことができるようになります。ジュエルには旅行のためのサービスカウンターを設置し、近くのフェリーターミナルからクルーズ船などを利用できるようにする予定です。
空港に到着後、近くのフェリーターミナルから船ですぐ市街地に向かうことができるという点で、シンガポール旅行における交通の利便性はこれまで以上に高まるでしょう。
―空港間の競争は世界的に激しさを増しています。現在の状況をどのようにご覧になっていますか。
各国における空港設備がグレードアップする中、旅行客が空港に求める設備やサービスのレベルも高まっています。空港は、もはや目的地に行くためだけの施設ではありません。世界各国のハブ空港は、他国の空港とのネットワークを拡大するとともに、旅行客に対してこれまで以上にその利便性をアピールするようになっています。
空港間の競争が激しさを増す中、チャンギ国際空港では常に新しい技術を取り入れ、利用者に対して質の高いサービスを提供することで、優位性を発揮していきたいと考えています。
観光振興だけでなく、MICE誘致に向けてチャンギと連携
―シンガポールの観光産業の発展に向け、STBではどのような取り組みを行っているのでしょうか。
シンガポールを魅力的な旅行先としてアピールするため、STBは継続的にさまざまな活動を展開しています。今年2月には日本からの観光客の誘致などに向けて、大手旅行会社であるJTBと協力することで覚書を締結しました。JTBが海外の公的な旅行機関との間で、こうした覚書を結ぶのは初めてのことです。
これ以外では、今年4月にウォルト・ディズニーの東南アジア部門との間で3年間のパートナーシップ契約を結びました。シンガポール島内でディズニーのキャラクターを活用したイベントなどを開催することで、旅行客にシンガポールの魅力を発信していきます。STBはシンガポールの地元企業とも協力し、観光振興を図る方針です。
―観光産業の振興を図るうえでチャンギ国際空港が果たす役割について、どのようにお考えでしょうか。
STBはシンガポールを魅力ある旅行先としてプロモートしていくため、世界380都市とつながる有力なハブ空港である同空港の強みを生かし、国内外から利用客を呼び込んでいきたいと考えています。シンガポールに来た旅行客に対し、魅力的な観光地を紹介し、快適な時間を提供するという点で、同空港の果たす役割は極めて大きいと言えます。STBは同空港やSIAとの連携を強化しています。
観光以外では、MICE(Meeting, Incentive Travel, Convention, Exhibition/Eventの頭文字を取ったもの。多くの集客を見込めるビジネスイベントなどの総称)の開催・誘致にも力を入れる方針で、同空港とも連携していきます。
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.322(2017年6月1日発行)」に掲載されたものです。
取材・写真=佐伯 英良