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シンガポールの“税金あれこれ”「会社がやってくれるから」で本当に大丈夫?

2016年10月12日

シンガポールの“税金あれこれ”  第6回 シンガポール居住者のための年金・社会保険

解説:AGSコンサルティングシンガポール株式会社 公認会計士 林竜太(はやし りょうた)氏

 

皆さんこんにちは、AGSコンサルティング公認会計士の林竜太です。

 

今回は、シンガポール居住者のための年金・社会保険について説明していきます。海外で働いていらっしゃる皆様は、ご自身に適用されている年金や社会保険についてご存じでしょうか?シンガポールの制度とも比較しつつご説明致します。

 

“国民年金 vs CPF” 93歳まで生きれば国民年金の方がお得??

 

両国の社会保障制度である日本の国民年金とシンガポールのCPF、実際どちらがお得なのか独自の観点から比較してみました。利回りに着目すると、(かなり)長生きすれば日本の国民年金の方が得という結論になります。

 

国民年金とCPFは制度設計が違うので、利回りのみに着目して比較します。なお、制度設計の大きな違いは、国民年金では現役世代が高齢者を支える形で資金を拠出するのに対して、CPFでは自らの貯蓄口座に積み立てる形で資金を拠出する点です。では、国民年金とCPFを比較してみましょう。

 

(1) 国民年金

国民年金は、現行制度上は収入に関わらず日本国内に居住している20歳以上60歳未満の方が年額20万2,800円(平成29年以降)を40年間に渡り納付し、65歳以上の方は年額78万100円の支給を受けることができる制度になっています。この前提のもとで男性の平均寿命は81歳、女性の平均寿命は87歳として給付額や利回りを計算すると、下記の通りになります。

 

納付額(円)給付額(円)利回り
男性8,112,00013,261,7001.39%
女性8,112,00017,942,3002.10%

 

(2) CPF

CPFは、収入に応じて個人と企業が負担します。現行制度上は通常口座で2.5%の利回りが保証されておりますが、CPFは積立方式なので長生きしても自分で積立てた金額以上が給付されることはありません。

 

上述の通り、日本の国民年金は長生きするほど給付額が増えるので得ですが、シンガポールでは長生きすると積立額が不足することも考えられます。なお、日本の国民年金の利回りがCPFの最低利回りである2.5%を超えるのは93歳まで生きた場合になります。ただし、上述の内容は、全て現行の国民年金およびCPFの制度が将来も変わらないという前提に基づいています。

 

以上を踏まえて、私は国民年金に加入する必要がありますか?

 

日本に住民票があれば原則的に強制加入、住民票がなければ任意加入です。

 

(1) 日本に住民票がある場合

海外に居住していても、日本に住民票が残っていれば国民年金の加入義務が生じます。

 

(2) 日本に住民票がない場合

国内に住所がない海外居住者は、国民年金に加入する必要がありませんが、将来の年金額を多く確保するために任意加入することも可能です。国民年金に加入していない期間がある場合、現行制度上は過去5年間分に限り後納することも可能なので、将来の年金を多く確保したい方は検討してもいいかもしれません。

 

また、国民年金を受給するにあたり最低加入期間があります。現行法では、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が25年以上であることとなっていますが、海外在住期間はこの保険料免除期間に該当します。つまり、海外在住で国民年金を納付していなくとも加入期間には入りますが、納付をしていない分の将来の給付金額が減少することになります。

 

ところで、私の日本の社会保険はどのようになっているのでしょうか?

 

会社との雇用形態によって日本の社会保険の適用状況は異なります。

 

(1) 日本法人(親会社)に在席したまま海外法人(子会社)に出向し、日本法人から給与の一部もしくは全部が支払われている場合

日本法人との雇用関係は継続しているとみなされるので、厚生年金・健康保険の対象になります。留守宅手当といった形で日本払い給与を受け取っている場合がありますが、この給与に基づき社会保険料を納付することになります。しかし日本払いの給与は、海外駐在前に受け取っていた給与金額と比べると少ないことが多いです。厚生年金は給与額に応じて支払金額が増減し、その分将来受給する年金も増減するというシステムなので、海外駐在期間に少額の日本払い給与に対する社会保険料しか納付していないと、海外駐在しなかった場合と比べて将来的に受け取る厚生年金の額が少なくなってしまいます。そのため、法律上は別として、実務的には海外駐在者が損失を被らないよう仮に日本勤務をしていたら支払われていた給与額を元に社会保険を納付しているケースも見られます。

 

また、海外での疾病等には日本の健康保険は適用できないと考えている方もいらっしゃいますが、健康保険の内容等によっては海外での疾病等が保障対象になっていることもあります。この場合、一度ご自身で立替清算を行い、必要書類を揃えた上で日本の健康保険組合に還付請求を行うことになります。

 

(2) 日本法人に在席しているが日本法人から給与が支払われない場合、または海外法人で採用された場合

日本法人に在席しているが給与が払われていない場合や、海外法人で採用された場合は日本企業との雇用関係はないとみなされ、日本の社会保険の対象にはなりません。

 

以上、税金と同様に会社任せにしてしまっていることが多い年金や社会保険ですが、この機会にご確認していただければと思います。

 

全6回にわたる、「シンガポールの“税金あれこれ”『会社がやってくれるから』で本当に大丈夫?」の連載はこれで完結です。皆様のお役に立つことができれば幸いです。

 

税理士 八鍬信幸

公認会計士 林竜太

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