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2016年8月15日

おもてなし力編 第4回 おもてなしリーダーは学びの先に「積小為大」であれ

リーダーの学ぶ力次第で組織は成長し続けることができます。「リーダーの器がその組織を決める」とよく言われますし、私自身もリーダーですので、緊張感をもって、リーダーとしての器を大きくするよう学び続けています。

 

ところで、リーダーにとってどんな「学び」が必要なのでしょうか。一般の社会人としてなら実践的なもの、つまり資格試験の勉強や、ある技術や能力を身に付けるための学びが多いですよね。学び方は先輩に教えてもらう、講習・研修を受けるといった方法があり、基本的にはある範囲の中で決まったレベルを学んで覚え、仕事の能力を高めていきます。

 

しかしリーダーの場合、能力ではなく「人格を磨くこと」が大切だと思っています。リーダーは多岐にわたる能力を鍛えなくても、特定分野では能力ある人材に依頼したり、機械などの設備や優れたシステムを導入したりすればいいからです。

 

例えば、リーダーに法務の知識がなければ弁護士に、税務会計の知識が必要であれば会計士や税理士に依頼できます。パターンが決まった仕事であればコンピュータを利用し、最近ではさまざまなシステムを搭載したロボットも出ています。リーダーなら経営資源として何を使うか、誰に依頼するかの判断を行えばいいのです。

 

このような判断ができた上で、リーダーの人としての器が問われます。お客様には温かいおもてなしの心をもった対応ができ、社員に対しては学び合いや助け合いのある温かい環境や組織を作れるよう、心配りや気配りができるリーダーになるべく人格を磨かなければならないのです。

 

人格を磨き続けるための大事な心構えとして、二宮尊徳が貧しい農民を救う手段として教えた「積小為大」という言葉をリーダーたちに伝えたいです。意味は字のごとく、「毎日小さいことを積み重ねれば次第に大きく為す」ことの偉大さを説いています。この言葉を自分自身でよく考え、噛み砕くことで、リーダーとしての人格を磨くことができると思います。

 

例えば私の場合、毎日寝る前にリーダーとして明日やるべきことを紙に書き出します。一般社員時代とは違い、ここでは部下のやるべきこと、組織全体のやるべきことまでも視野に入れることがポイントです。その中から自分がやるべきことの重要度に応じて優先順位をつけていきます。翌朝起きたらその順位に従って一つひとつ確実に実行していきます。リーダーはリーダーとしての責務を全うすることが重要であり、自分のこれまで行ってきた好きな仕事や得意な仕事を早く処理することではありません。自身がリーダーであるという自覚を持ち、その役割を見極めることもリーダーとして重要です。

 

ここで注意すべきポイントがあります。リーダーは組織の目標をも立てる必要がありますが、それが抽象的だったり、大きすぎる目標だったりするばかりではいけません。確かに、自分たち組織の夢を実現するために大きな目標は立てるのはよいことですが、そこは今日一日でできるところまで、と目標達成までをできるだけ小さく区切ってから、全力を注いでいくような指導が必要だと思います。

 

過去に培った数々の能力(知的能力と技能・技術的能力)に加えて人格を磨くことで、リーダーの人生はいい方向に大きく変わっていくことでしょう。夢のような大きな目標を心に抱きながらも、「積小為大」のごとく小さな目標を多く掲げて毎日コツコツ続けていけば、いつかは大きな目標の実現につながるはずなのです。

Mr-Houdai蓬台 浩明(ほうだい ひろあき)
株 式会社都田建設 代表取締役社長。2007年、株式会社都田建設の代表取締役社長に就任。住まいづくりを軸としたライフスタイルの美、心の美、社風力による独自のマネジメ ントで、同社を「日本が誇る『おもてなし経営企業』」(2013年)に選出されるまでに成長させた。著書に『お客様に選ばれる社風力をつくる』『社員を バーベキューに行かせよう!』などがある。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.308(2016年8月15日発行)」に掲載されたものです。

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