シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPシンガポールの“税金あれこれ”  第1回 所得税の基礎(日本vs...

シンガポールの“税金あれこれ”「会社がやってくれるから」で本当に大丈夫?

2016年7月27日

シンガポールの“税金あれこれ”  第1回 所得税の基礎(日本vsシンガポール)

解説:AGSコンサルティングシンガポール株式会社 税理士 八鍬信幸氏

 

皆さんこんにちは。AGSコンサルティングの税理士の八鍬(やくわ)です。

 

今回、「シンガポールの“税金あれこれ”」というタイトルで、シンガポールで働くビジネスマンの方向けに、全6回のシリーズでビジネスコラムを書かせていただくことになりました。

 

「税金」と聞くと、難しいイメージをお持ちの方も多いのでは?また会社員の方は、「会社の方でやってくれているから大丈夫」と安心していらっしゃる方も多いのではないかと思います。ただ、それで本当に大丈夫ですか?実際にふたを開けてみたら、「大丈夫」ではない場合も多く、特にシンガポールなど海外で働く場合には、日本と違う取り扱いなども多いため、日本で働いていたときよりも注意が必要になってきます。

 

今回のシリーズでは、トラブル事例なども紹介しつつ、シンガポールと日本における「税金」について少しでも知ってもらえるよう、分かりやすく解説していきたいと思います。

 

第1回 所得税の基礎(日本vsシンガポール)

まずは何事も基礎が大事。第1回は、「所得税の基礎(日本vsシンガポール)」と題し、個人の収入について課税される「所得税」の基礎を日本とシンガポールを比較しながら解説していきます。

 

全世界所得課税vs国内源泉所得課税

日本とシンガポールでは、課税される所得の範囲がそもそも違います。日本に住んでいる人(日本居住者)は「全世界所得課税」と言って、世界のどこでお金を稼ごうが、基本的にすべての稼ぎに対して日本の所得税が課税されます。

 

一方でシンガポールに住んでいる人(シンガポール居住者)は、シンガポールで稼いだお金のみシンガポールの所得税が課税されることになっています。

 

ここで注意していただきたいのが、どちらの国で稼いだかは、お金の支払いを受けた国ではなく、どこで働いたかで判定するという点です。

 

例えば、シンガポールで働くAさんは、日本の親会社から駐在員としてシンガポールで働いており、給与の30%を自分の日本にある銀行口座に振り込んでもらっています。この場合、Aさんはシンガポール居住者ですので、日本の口座に振込まれる30%部分に対してシンガポールの所得税は課税されないということになるのでしょうか?

 

答えは“NO”です。あくまでAさんはシンガポールで働いているので、日本の口座に振込まれる30%部分も含めて、シンガポールの所得税が課税されます。

 

源泉徴収 + 年末調整 vs 確定申告

シンガポールに来て、給与の手取額が増えたように感じたことはありませんか?その理由は「源泉徴収制度」です。日本では、毎月の給料から税金が引かれる「源泉徴収制度」があったため、給与の額面金額と手取額には差がありました。

 

一方でシンガポールでは、給与について「源泉徴収制度」はありません。つまりは額面通りに給与の支給がされるわけです。

 

日本で給与しかもらっていなかった方の多くは、毎月の源泉徴収と年末調整で納税が完了していたため、確定申告をしたことがない方も多いかと思います。

 

ただし、シンガポールは違います!「源泉徴収制度」がない代わりに「確定申告」をしなければなりません。何も知らずに確定申告をし忘れて、ペナルティーを受けることにならないよう注意してください!シンガポールでの確定申告については、第2回で詳しく解説します。

 

税率 55% vs 22

「シンガポールは税金が安いというけれど、実際どれくらい違うの?」こういった質問をよく受けます。人によって多少計算も変わるので一概には言えませんが、だいたいシンガポールの税金は日本の半分程度になります。

 

日本もシンガポールも「累進課税制度」と言って、所得の大きい人ほど税率の高くなる制度を採用していますが、税率自体が大きく違います。日本の最高税率が55%(住民税を含む)なのに対し、シンガポールは22%です。

 

具体的な数字で比較してみましょう。例えば、給与が1,000万円の場合で比べてみると、日本の所得税(住民税も含む)は約180万円なのに対し、シンガポールでは約70万円。単純に税額だけ比べてもシンガポールはかなり税金の安い国であることが分かります。

 

第1回の「所得税の基礎」は以上になります。第2回以降で日本とシンガポールの「税金」についてさらに詳しく解説していきます。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPシンガポールの“税金あれこれ”  第1回 所得税の基礎(日本vs...