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スペシャルインタビュー

2012年7月13日

「現代に必要な『茶の心』を伝える」

裏千家今日庵業躰倉斗宗覚(くらかず そうかく)

スクリーンショット 2015-06-30 11.37.55茶道裏千家淡交会シンガポール支部設立20周年を記念して講演会が、6月24日に開催されました。講演者は、裏千家の前家元・鵬雲斎千玄室大宗匠の名代、倉斗宗覚(くらかず そうかく)氏。ユネスコ親善大使としても多忙な大宗匠に代わって講演を行い、千利休の時代の話から、利休が、弟子に伝えたとされる教え「利休七則」をわかりやすく解説。日本の茶道や日本文化に興味を持つシンガポール人や在住外国人などが熱心に耳を傾けていました。今回、講演を終えたばかりの倉斗氏に話を聞きました。

 

 

 

AsiaX

シンガポールには以前お越しになっているとのことですが、今回一番違いを感じられたことは?

倉斗

スクリーンショット 2015-06-30 11.37.48初めて来たのは20年前でした。今回まず気付いたのが、建物の高層化が進んだこと。デザインも多様化していて、自由な感じが日本とはずいぶん違うな、と。街も近代的で明るい雰囲気で、素晴らしいと思います。道路が広くて、花もたくさん咲いていて、人がなじみやすそうですね。日本では、私が住んでいる京都の街中でも頻繁にサイレンの音を耳にしますが、シンガポールではほとんど聞いていません。都市ってこうあるべきなのではないか、と思いました。国として、人々にとって居心地の良い環境づくりが意識的に行われているのでしょうね。

 

 

 

AsiaX

これまでに世界各国を訪問されていますが、特に印象に残っている国はありますか。

倉斗

訪問した国は30数ヵ国になりますが、一国一国が印象に残っていますね。それぞれにお国柄があって、いろいろと違うこともありますが、嫌な思いをしたことが無いんです。人との出会いが何より一番楽しいですね。たとえ思想が違っていても、茶の湯、茶道の紹介を拒否されることはありませんから(笑)。

AsiaX

海外で活動される際に特に配慮されていることは。

倉斗

決して押し付けになってはいけないと思っています。妥協しなさい、という意味ではなく、行かせていただく、という気持ちを忘れてはなりません。相手の国のことを知っておくことも必要です。ただ、文化の紹介というのはやはり難しいですね。

AsiaX

海外で茶道に親しむ人々をどうご覧になりますか。

倉斗

日本との違いはあまりありません。もちろん、日本とまったく同じようにはできない部分もありますが、例えば稽古場なども現地の方が上手に工夫されていて、感心することも多いんです。お茶の真髄から外れていないんですよね。まね事ではなく、創意工夫をすることが大事だと思います。裏千家には、外国人が研修するためのみどり会というものがあって、短期から長期までさまざまな生徒がいるのですが、中には日本人より日本人らしい生徒もいますね。お茶を始めたきっかけは、宗教的な興味だったり、道具の美しさだったり、あるいは手前の型だったりといろいろですが、彼らが開くクリスマス茶会から教えられることも多いんです。「茶の心」がわかっているんですよね。教える側も彼らを外国人だからと甘やかさず、厳しく稽古をしているからだと思います。

AsiaX

今回の講演会のテーマに「茶の心」を選ばれたのはなぜですか。

倉斗

今回大宗匠の名代ということで講演をさせて頂いたのですが、大宗匠は本当に平和への思いが深い方なんです。ご自身が太平洋戦争時に特攻隊員でありながら生き残ったこともあって、「一碗からピースフルネスを」の理念を提唱し、それを実践するために世界各国を回っておられます。大宗匠のご先祖でもある千利休もまた、平和の尊さを茶道を通じて伝えようとした方でした。講演のテーマを考えた時、現代に何が必要かを考えて「茶の心」を選びました。利休の教えとされる「利休七則」の話をしましたが、例えばその中のひとつ「降らずとも雨の用意」というのも、「不断の用意を」ということ。これはお茶に限らず、日常生活にも通じるものがあると思うんです。

AsiaX

茶道において今後どのような取り組みをお考えでしょうか。

倉斗

私たちは伝統を守る立場ですから、温故知新で昔のことから学ぶことも多く、守ることも難しいと感じますね。ただ、守るだけではだめだとも思います。この世界に入って40年になりますが、日々新たで、これで良しとすることはありません。自分の心の有様を見るとまだまだだと思います。もっと高みを目指さなければ、と。大宗匠が、家元になる時に先代に言われたそうなんです、「死んでも修行だ」と。お茶はルールが厳しいと思われがちなのですが、ルールではないんですね。最低限のマナーとしてやるもので、できるようになれば、お茶を通じた人との出会いもより楽しいものになりますし、心が整ってくるものです。

AsiaX

最後に、シンガポールで暮らす日本人の方々へのメッセージをお願いします。

倉斗

シンガポールと日本をつなぐ絆にぜひなってください。お茶の心があれば、さらなる良い関係が築けるのではないでしょうか。

倉斗宗覚(くらかず そうかく)

1946年生まれ。千玄室大宗匠、千宗室家元のスタッフとして、また家元名代として数々の行事に参加し、大宗匠や家元の海外訪問にも随行。著書に『茶の美 – いまに生きる茶のこころ』(淡交社)、『茶の湯質問箱』(世界文化社)など。NHKのテレビ番組「趣味悠々」などにも出演し、一般にもさまざまな形で茶の心を伝えている。

 

2012年07月13日
文= 石橋 雪江

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