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法律相談

2010年11月15日

Q.昨今の日中の政治関係の悪化による当社の中国ビジネスへの影響を懸念して、東南アジア諸国への進出の可能性を検討するように本社から指示されました。候補先としてベトナムが挙がっているのですが、ベトナムへの進出形態にはどのようなものがあるのでしょうか?

ベトナム投資――外国企業の進出形態について

投資形態の細かい分類は2006年7月1日施行の投資法に規定されていますが、日本企業の皆様にとっては、従来からの典型例である以下の3つの分類からご説明させていただくのがよいかもしれません。

 

①外国人(外国企業)による100%出資の組織

②外国人(外国企業)とベトナム人(ベトナム企業)による共同出資の組織

③Business Co-operation Contract(事業協力契約、事業協同契約などと訳されているようです)

 

①と②は、出資割合に着目した分類であり、有限会社、株式会社、パートナーシップ、個人企業などといった分類とは別の概念です。このうち、会社形態としては有限会社が用いられることが多いと思われます。これは、有限会社の方は、出資者が1人でもよいのに対して、株式会社においては最低3人必要とされることをはじめとして、簡易な組織構成が可能であることの影響が大きいといわれています。

 

では、①と②のどちらを選択すべきか。これは、投資を検討されている日本企業の皆様の個別具体的な事情によって変わってきます。例えば、そもそも、投資分野によっては、①の形態が法律上許されない、又は法律上は許されるとしても当局との関係で様々な制約が予想される場合(当局から条件をつけられる、難癖をつけられてなかなか審査が進まない、など)が考えられます。

 

また、ベトナム企業との関係も1つのポイントとなります。合弁相手とのトラブルや意見の不一致によるデッドロックを避ける観点からは、日本企業による100%出資の方が望ましいかもしれません。他方で、投資リスクを分散させたり、日本企業及びベトナム企業がそれぞれの経験、ノウハウ、人材などを提供しあうことでシナジーが得られる場合もあると思います。事業に不可欠な免許を合弁相手が有しているという場合もあるかもしれません。

 

③のBusiness Co-operation Contractは、日本ではあまり見かけない投資形態の分類かと思います。前述の投資法において、Business Co-operation Contractとは、新設法人を設立せずに事業協力、利益配当、製品の分配を目的として、各投資家の間に締結される契約と定義されています。パートナーシップに近いものをイメージしていただければよいかと存じます。利益・損失分配、出資、責任等についての取り決めを行うことがDecree 108によって要求されていますが、それを超えてストラクチャー自体を規制する法律はないため、他の形態では取りえない柔軟なストラクチャーを実現可能である点に利点があるといえます。他方で、Business Co-operation Contractには法人格がないため、そこで行われる事業のリスクが投資企業本体に及ぶのを防ぐ必要がないか、必要がある場合にはどのようなスキーム構築が最適かといった観点からの検討が重要となります。

 

以上ご紹介した進出形態以外にも、駐在員事務所や支店といった形態もございます。ただし、駐在員事務所については行うことのできる活動が限定されており、支店については銀行等の限られた分野についてのみ設置が許されている状態です。

 

冒頭でご説明したとおり、これらは一部に過ぎませんし、業務内容によって事情は大きく異なります。具体的な進出計画にあたっては早期に専門家にご相談されることをお勧めいたします。

取材協力=Kelvin Chia Partnership 大矢 和秀

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.179(2010年11月15日発行)」に掲載されたものです。

本記事は、一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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