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法律相談

2009年2月16日

Q.今度シンガポールに赴任することになり、アパートを借りなければなりません。シンガポールでアパートを借りる場合の条件などは、日本とは随分違うのでしょうか。気をつけることがあれば教えてください。

不動産の賃貸借について

日本では、建物の賃借をする場合には、「借地借家法」という法律が適用され、建物の賃借人は、契約期間が満了しても家主に正当な理由がない限り契約の更新を拒絶されないなどの保護が受けられます。それに対してシンガポールでは、日本の借地借家法に該当するような法律はありません。したがって、シンガポールでアパートを借りる場合は、契約に記載された内容以上に賃借人が保護されることは期待しない方がよいでしょう。

 

シンガポールの契約では、一般的に、契約期間内の中途解約を認めないことが多く、その場合、契約期間内に退去することになった場合でも、契約期間満了までの家賃を全額支払う必要があります。ただし、契約によっては、転勤など本人の意思にかかわらず退去せざるを得なくなった場合に限って中途解約が認められる場合があります。このような条項には、最低1年間居住していたことや、一定期間前までに通知をすることなどの条件が付いていることがありますので、中途解約が認められる条件はチェックしておくべきです。なお、代わりの賃借人を探してきて契約を引き継いでもらうことによって、契約期間の途中に退去できる場合もあります。契約期間が満了して更新する場合には、契約書に特に新たな賃料に関する規定がない限り、次の期間の賃料の交渉をする必要が出てきます。

 

契約を締結する際には、家主や不動産業者が説明した内容が契約書にきちんと含まれているかどうかを確認する必要があります。いくら口頭で説明されても、書面に記載されていなければ、契約した後になって抗議しても水掛け論になりかねません。また、契約書には印紙税を支払い、その証明書を添付することが必要です。印紙費用は一般的に賃借人負担となっており、印紙税の納付を怠ると罰則もあります。シンガポールでは家具があらかじめ備え付けられたアパートが多いと思いますが、退去する際に家具がなくなった、あるいは損傷したなどという点でトラブルにならないように、入居時にチェックリストを作成しておくと安心です。特に、もとから損傷していた家具については、入居するときに確認しておくことが大切です。

 

契約期間中には、設備や家具などに修繕が必要になる場合があります。このような修繕については、消耗品や安価なものについては賃借人負担となっていることが一般的です。一方それ以外の備品などで、通常の使用の範囲内で故障や不具合が生じて修繕が必要になった場合は、家主が自己の負担で修繕を行うことになっています。この場合、賃借人は、自分で勝手に修繕しないで、家主に対して修繕を要求することが必要です。自分で勝手に修繕しても、その費用の負担を家主が拒否することがありますので注意が必要です。

 

契約期間の満了とともに退去する場合、契約書には賃借人に事前の通告義務が課せられている場合があります。その場合、契約期間の終了日から通告期間(例えば2ヶ月)前までに家主に退去を通告しないと、余分な賃料を支払わなければならなくなる可能性があります。退去に際しては、部屋内や備え付けの家具・備品などのチェックを行い、もし賃貸期間中に損傷したものがあれば弁償をしなければなりません。ただ、時間の経過とともに自然に消耗したり傷んだりしたものについては、通常賃借人は弁償する義務はありません。

 

以上は標準的な賃貸借契約を前提とした注意点ですが、契約によっては上記と異なる内容の条項が含まれている場合もありえます。契約の際には各条項をきちんと確認することが大切です。

取材協力=Kelvin Chia Partnership

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.139(2009年02月16日発行)」に掲載されたものです。

本記事はは一般情報を提供するための資料にすぎず具体的な法的助言を与えるものではありません。個別事例での結論については弁護士の助言を得ることを前提としており、本情報のみに依拠しても一切の責任を負いません。

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