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会計・税務相談

2013年4月15日

Q.取締役に支払われる報酬は、取締役会または株主総会の承認が必要でしょうか。 また、取締役に支払われる報酬に対する税務上の取り扱いはどうなるでしょうか。

取締役に支払われる報酬

シンガポールの会社法では、取締役への報酬の支払いまたはその増加に関して、取締役会の決議による承認が必要とされています。また、一般に、シンガポールの会社の定款は、取締役の報酬に関して株主総会で決定することと定めています。ただし、ここでいう報酬は、取締役が会社法に定められる取締役としての職責を果たすことに対して支払われる報酬を指しており、取締役を兼務する会社の従業員が受け取る給与や、非常勤取締役に就任する会社の顧問弁護士が受け取る法務顧問料等は、取締役報酬とは別のものであり、これらの支払いについて取締役会決議または株主総会による承認は必要ないと考えられています。

 

一方、会計上では、シンガポール財務報告基準第24号「関連当時者についての開示」により、取締役を含む経営幹部(Key Management Personnel)の報酬について、◇短期従業員給付、◇退職後給付、◇その他の長期給付、◇解雇給付、◇株式報酬の項目別に財務報告書の注記に開示することが義務づけられています。ここでいう経営幹部とは、企業の取締役(執行役またはその他の役職であることを問わない)を含む、企業活動を直接的または間接的に計画し、指示を行い、または支配する権限および責任を有する者と定義されており、必ずしもすべての取締役が経営幹部に該当するとは限りません。逆に、会社の取締役でなくても、前述に定義される権限および責任を有する立場にある人については、経営幹部として報酬を開示しなければなりません。

 

上場会社の場合には、シンガポール金融庁により発行される「企業統治規則」(Code of Corporate Governance)に従い、報酬委員会を設置して取締役および経営幹部の報酬の枠組みを吟味し、取締役会に提案しなければなりません。また、会社の年次報告書の一環として発行される企業統治報告書において、各取締役およびCEO、ならびに取締役以外の経営幹部のうち上位5名について個別に報酬を開示することが要求されています。

 

税務上、取締役としての職責に対して支払われる取締役料は、取締役にその報酬を受け取る権利が生じた年に発生したと見なされます。通常、取締役料は、会社の定時株主総会における株主の承認により、取締役にその権利が生じたものとして取り扱われます。したがって、例えば2012年12月期に関する取締役料S$10,000が2013年6月30日の定時株主総会で承認された場合、S$10,000の取締役料は、2013年に発生した所得として2014賦課年度に申告されることになります。

 

取締役が非居住者(賦課年度の前年のシンガポール滞在日数が183日未満)である場合には、会社は、取締役料の支払いについて20%の税率で所得税を源泉徴収して内国歳入庁(IRAS)に申告および納付しなければなりません。源泉徴収税の申告および納付期限は、株主総会において取締役料が承認された日の翌々月の15日とされています。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.232(2013年04月15日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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