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会計・税務相談

2009年11月2日

Q.シンガポールで新プロジェクトを立ち上げる計画が日本本社で進められており、その調査のために本社から技術者数名が数ヵ月間シンガポールに長期出張する予定です。彼らの就労ビザ及び税金の申告についてどのようにすればよいでしょうか。

短期就労者のビザ及び所得税

本社の技術者が本社の業務上の目的でシンガポールに長期出張される場合も、シンガポールの会社に出向する駐在員と同様にエンプロイメントパスの取得が必要になります。但し、この場合、技術者の方々の雇用主は本社になりますので、本社を雇用主かつシンガポール会社を保証人としてエンプロイメントパスの申請を行うことになります。

 

税務上、上記の出張者の方々のシンガポール滞在期間中の給与所得に関してはシンガポール源泉所得と見なされますので、原則としてこれらの所得についてシンガポールで税務申告する必要があります。この場合、シンガポールにおける暦年の就労日数が合計183日未満の場合には非居住者、183日以上の場合には居住者として取り扱われます。但し、特例があり、2暦年に亘り連続して合計183日以上滞在した場合、或いは3暦年に亘り連続して滞在した場合は、その全滞在期間について居住者として取り扱われます。

 

居住者については居住者用累進税率で課税されるのに対し、非居住者の場合には雇用所得について税率15%又は居住者と同様の計算により算定された税額の何れか高い方の金額で課税され、非居住者として課税された場合の方が税額が高くなります。尚、非居住者のうち、暦年の就労日数が合計60日未満の場合の雇用所得については、所得税法により免税とされます。

 

また、所得税法の規定とは別に、日本・シンガポール間の租税条約により、日本の税務上の居住者が以下の要件を全て満たす場合には、シンガポールでの就労による雇用所得について日本でのみの課税とすることができます。

 

  1. 連続する如何なる12ヶ月間(暦年に関係なく)においても合計183日以上シンガポールに滞在していないこと
  2. 給与その他の支払い(ホテル代、交通費等の諸経費も含む)が税務上のシンガポール非居住者である雇用主により支払われていること
  3. 給与その他の支払いについて雇用主がシンガポールに有する恒久的施設又は固定的施設が負担していないこと

 

上述の租税条約による免税の適用を申請する場合には、シンガポールでの税務申告時に日本の管轄税務署による証明を受けた居住証明書を添付して提出する必要があります。

 

日本の本社では、通常、1年以上の予定で派遣する場合を除き、海外に滞在する従業員について税務上の日本居住者として取り扱い、長期出張期間中も所得税を源泉徴収して納付しています。

 

前述のシンガポールでの免税が適用されず二重課税となった場合には、日本において確定申告時にシンガポールで納付した所得税について外国税額控除を申請することができます。

取材協力=斯波澄子(Tricor Singapore Pte. Ltd.

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.156(2009年11月02日発行)」に掲載されたものです。

本記事は一般的情報の提供のみを目的として作成されており、個別ケースについて、正式な会計士の助言なく、本情報のみに依存された場合は責任を負いかねます。

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