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嶋津良智の「リーダーにつける薬」

2010年5月3日

汚れ役を買って出ろ!

ロングセラーを続けている私の著書『あたりまえだけどなかなかできない 上司のルール」(明日香出版)』にも少し書いていますが、部下に嫌われる、部下に嫌がられると分かっていても、やり抜かなければならないことが上司にはあります。

 

 

先日、オリンピック水泳平泳ぎで2大会連続2種目金メダル獲得の偉業を成し遂げた北島康介選手のコーチ、平井伯昌さんが書かれた著書『見抜く力―夢を叶えるコーチング (幻冬舎新書) 』に、北島康介選手が中学3年生の時のエピソードでこんな一節がありました。

 

 

『当時、康介の練習を見ていて、ジュニア・オリンピックで中学記録が出そうになったことがあったのだ。周りの人たちも、「この調子でいくと、中学記録が出るだろう」と騒ぎはじめた。だが、それまで学童記録を出した選手を何人も教えていた私の経験からして、変に注目を浴びてほしくなかった。チヤホヤする外野が増えると、かえって面倒なことになる。そこで、試合前の練習を厳しくした。うまく泳げていると思っても、「やり直し!」と声をかけ、いつもより負担をかけて疲れさせる作戦を実行した。調子をわざと落とさせたおかげで、試合では中学記録にも及ばず負けてしまった。康介には申し訳ないことをしたが、正直に言えば、「負けてよかった」と思う。ストレートにオリンピックを目指さなければいけない時期だった。中学記録程度で浮かれている暇はなかった。四年間弱という短期間でオリンピックを狙う選手をつくることが先決で、寄り道している場合ではなかったのだ。このとき中学記録を獲らせていたら、おそらく「心・技・体のバランス」は狂ってしまっただろう。私たちは、もっと遠くを見つめているんだ、という気持ちがあった。』

 

 

ここから学ぶことは、

  • 相手のことを本気で考えているということ、
  • ゴールをめざして目先にとらわれなかった勇気、
  • 自分の考えに対する信念、コーチに対する信頼、

そんなところではないでしょうか。

 

 

上司と部下の関係のイロハの詰まった一節だったので紹介させていただきました。

私はある3つのことを捨てたときに、部下とのコミュニケーションが大きく変わり、非常に良好になり、汚れ役を演じることも苦にならなくなりました。

それは、

  1. 人に好かれたいという気持ちを捨てる
  2. 他責を捨てる
  3. 勝手な思い込みを捨てる

次回はこの3つについてお伝えしたいと思います。

文=嶋津良智(しまづよしのり)


株式会社リーダーズアカデミー
代表、シンガポール在住。
2度の株式上場体験を活かし、日本・シンガポールを始め、アジアを中心に経営コンサルとして活動。世界9ヵ国12都市でチャリティーセミナー実施。
最強の部下を育成し、最強の組織を作る、業績向上のための独自プログラム『上司学』が好評を博す。著書7冊執筆、韓国・台湾でも翻訳されている。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.166(2010年05月03日発行)」に掲載されたものです。

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