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2014年11月17日

感性トレンド編〈第3回〉どれもみんないい時代とトップの時代

歌謡曲にも感性トレンドを見ることができます。

 

たとえばジャニーズの中でも26年もの長期人気を誇る男性アイドル、SMAPの曲に『世界に一つだけの花』があります。歌詞は、「No.1にならなくてもいいもともと特別なOnlyOne」「ひとそれぞれ好みはあるけど どれもみんなきれいだね」と、多様性を賛美する内容です。この歌は、2003年5月にはオリコン集計で売上が200万枚を突破。200万枚を突破したのは2000年発売の「桜坂」(福山 雅治)以来3年ぶりの快挙だそうで、当時の人気を得ていたことがわかりますね。そして、SMAPの歌で初めてオリコンシングルチャート年間ランキング1位を獲得しています。時代の感性にマッチしたこの歌の歌詞に登場する「オンリーワン」はこの年の流行語にもなりました。

 

1999年〜2012年は、人間愛あふれる時代で、人にも自分にも優しいのが、気持ちいい感性傾向だったのです。ですから、どんなものにも価値を見出し、それぞれがみんな素晴らしい、と思っているときに、「どれもみんなきれいだね」という歌が心地よくヒットしたのでしょう。

 

さて、時代はいつまでも同じ所にはとどまりませんから、歌も変わってきているはずですね。

 

そういう目で見てみると、同じSMAPの歌に、『Top of the world』があります。これは、2014年7月に発売されたシングルです。歌詞は、「世界最高の始まりさここからは未体験ゾーン 常識を開放せよHere we go」「やつが最後に勝つようにこの世界出来てんだぜ」のセリフも入っています。この曲も、2014年7月28日付オリコン週間シングルチャートで1位を獲得。約12万3,000枚を売り上たとのこと。この曲が好きな方のコメントをみてみると、「攻めている」「新鮮」のワードが出ています。「世界最高」や「やつが最後に勝つ」という歌詞は、2013年以降の感性が単純で競争の時代へ向かう傾向に、ぴったりと乗っています。

 

優しく甘い時代から、厳しく辛い時代へどんどん近づく14年間が始まったのだな〜と、歌を見てもわかりますね。

 

他の例も見てみましょう。2010年には、『オーシャンズ』という映画を観て、サメを殺すのはかわいそうだと思い、愛護したい気持ちが強くなりました。人間は、いつもサメを愛護したいかと言うと、そういうわけでもなく、こんなことも時代によって、違ってきます。みなさんは、1975年の映画『ジョーズ』をご覧になったでしょうか?この映画には、人食いザメが出てきます。そしてボートを食い破って、人を襲います。この恐怖のサメは、最後は、人間に殺されて映画が終わります。見ていた人たちは、サメが人を襲うシーンと最後にサメが死ぬシーンをどう感じたのでしょうか?この映画はそんな残虐シーンでも(だからこそ、なのかもしれませんが)ヒットし、4作目までつくられました。

 

まだ先ですが、2027年を過ぎると、1999年〜2012年までの気分と反対の気分になることが予想されます。

 

さあ、2012年までの気分と、2013年以降の今の気分が、かなり違うのがお感じいただけたでしょうか?去年、今年と、変化が表れているものをぜひ、見つけてみてください。これを知ったら、あなたの事業も変化を取り入れたくなるかもしれません。

 

tedzuka手塚 祐基(てづか ゆき)

株式会社感性リサーチ研究員、倉敷芸術科学大学芸術学部非常勤講師
21年間の腕時計デザイナーを経て、2006年より感性研究を開始。現在、ネーミングコンサルティングや企業向け講演活動を行う。筑波大学、工学院大学、東京大学大学院情報学環などのゲスト講師も務める。共著『人は語感でいい・悪いを決める』KAWADE夢文庫

ウェブサイト:ameblo.jp/tetsuka-kansei/

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.269(2014年11月17日発行)」に掲載されたものです。

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