「液体天然ガス事業のパイオニア」LNG供給網構築で東南アジア発展へ貢献

昨年12月、東京ガス株式会社が100%出資子会社として東京ガスアジア社をシンガポールに設立した。今年2月にはベトナムのハノイ、3月にインドネシアのジャカルタに駐在員事務所を設置。年内にタイのバンコクにも駐在員事務所を開設する。マレーシアではすでに1991年から国営の石油会社ペトロナス社との合弁会社であるガス・マレーシア社を運営している。東京ガスアジア社は、これら東南アジア域内の拠点の統括、事業案件への投資管理を行う。

東京ガスは2011年、東日本大震災後に「チャレンジ2020ビジョン」を発表。日本国内における安全で安定したエネルギー供給などとともに、海外事業の多様化・拡大を目標の1つに掲げている。シンガポールを含む東南アジアでの拠点設立は、この経営ビジョンにおける「2015年から2017年度の主要施策」である「グローバル展開の加速」を具現化したものだ。

日本で培った技術とノウハウを活かし　LNGのバリューチェーン構築

東京ガスアジア社の小林信久取締役社長は、「東南アジアのハブであるシンガポールは、域内全体の事業を俯瞰する拠点を置くには最適だと思います。東南アジアは経済成長が著しいと言われますが、国によって成長の速さは違う。各国の事情に合わせて、LNG（Liquefied Natural Gas／液化天然ガス）の受け入れから供給までバリューチェーンの構築をめざします」と話す。

東南アジア、オーストラリア、中東などで採掘された天然ガスはマイナス162度に冷却、液化された状態のLNGになる。気体のガスと比べてLNGは体積が600分の1となり、タンカーでの大量輸送と貯蔵が可能となる。このLNGを東京ガスは1969年から扱っている。

「東京ガスは130年の歴史の中で、成功も失敗も経験してきました。蓄積してきた技術、ノウハウは強みであり、LNGの導入では世界におけるパイオニアです。これまで当社が日本で経験してきたことを、東南アジアで活かすことができると考えています。エネルギー、インフラ構築を通じて各国の発展に貢献するとともに、ビジネスとして成功させたい」。

東南アジアでは工業団地や発電所などへの天然ガス供給を行う。上流から下流、すなわちインフラへの投資からガス供給販売までを一貫して手掛け、日本が得意とする省エネ技術を売り込む。

「経済成長が進むにつれ、その分エネルギーも必要となります。東南アジアでの事業においてはLNGの受け入れ基地や天然ガスを送るためのパイプラインの建設も手がけることになります。エネルギー、インフラ事業は各国政府とのやりとりが必要であり、すでに青写真を作成し、交渉を進めている案件もあります」。

東南アジア進出は、東京ガスが掲げる「チャレンジ2020ビジョン」においても海外展開のハイライトといえるほど重要な意味を持つという。

「短期間で行う事業ではありません。東南アジアにしっかり根を張って、10年、20年、30年という期間を見据えて取り組んでいきます」。