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インドの今を知る

2010年6月7日

インド市場でも、中国市場の再来を目指す・他

インド市場でも、中国市場の再来を目指す

日経BP(2010年4月21日付)の記事「遅れてやって来た日産、インドで中国の再現を期す」は、日産自動車のインドプロジェクトの本格始動を伝えるものでした。日産自動車は、仏ルノーと合弁で年産20万台の能力を持つ工場を南部チェンナイ郊外に建設して5月に稼動、初の現地生産車「マイクラ」(日本名「マーチ」)を立ち上げ、2013年までにインドでの販売を10万台以上という高い目標を設定しています。同工場は近い将来には年産40万台に能力を引き上げる計画になっています。

日産は、スズキはともかく、トヨタ自動車やホンダより10年余り遅れた進出となります。90年代後半に外資規制が緩和され自動車各社が一斉に工場進出した時には、業績が悪化していたことで投資余力はなかったのでした。

日産は、現在、日産がインドで販売しているのはSUVの「X-TRAIL」など3モデルで、いずれも高関税のかかる輸入車のため、まだ日産車のシェアは1%にも満たないものです。インドではチェンナイの新工場稼働を機に、一気に10年余の遅れを取り戻す構えです。

計画では2012年までに現地生産車5車種を含む9車種に品揃えを拡充、販売網も20店から13年には全土の85%をカバーする82店に増強する計画です。

先月稼動開始したチェンナイ工場がトヨタやホンダの現地工場と異なるのは、当初から輸出拠点と位置づけていることです。輸出先は欧州、中東、アフリカで、2011年度には内需向けを大きく上回る11万台の輸出を目標としています。スズキやホンダの工場が首都ニューデリー近郊の内陸部に立地するのとは対照的に、工場の立地を海に面したチェンナイに決めたのも、輸出拠点としての育成を狙ったためです。

日産は中国・東風汽車との中国合弁工場を稼働させたのは、トヨタやホンダに遅れた2003年でした。しかし独自の車種展開や販売ネットワークの整備が功を奏し、昨年来、先発2社と肩を並べる販売実績をあげるようになっています。

インドの2009年度の新車市場は、前年度を28%上回る248万台となりました。そう遠くない将来に1000万台に届くインド市場にあって、日産はニッチでなくメジャーなプレーヤーをめざしています。

米国に配慮しつつ、イランに接近中

SankeiBiz(2010年4月28日付)に「中国とインド 対イラン投資・貿易を拡大」という記事がありました。核開発を進めるイランに対する追加制裁を目指す米国を尻目に、中国とインドはイランへのエネルギー投資や同国との貿易を拡大させており、イランの側でも、台頭するアジアの大国と戦略的関係を深めることに利益を見いだしている、というものです。

イランにとって、アジアは極めて重要な市場です。同国の原油輸出先は、上位から順に、日本、中国、インド、韓国です。アジアを同国の石油製品の有望市場とみており、米国の制裁で締め付けを受ける国内産業のパートナーと位置づけています。中でも、台頭するアジアの大国である中国とインドとの戦略的関係を深めようとしています。対イラン貿易額は2000年から2009年の間に、インドは6.5倍、中国は10倍となっています。

中国は、最近まで米国との関係に配慮し、イランへの投資を抑制してきましたが、07年以降、中国はイランと多くのエネルギー契約を結ぶようになっています。インドも、今後10年で1,600億ドルといわれるイランの投資需要に注目しています。

しかし、インドは米国のエネルギー市場への投資も視野に入れており、米国からの圧力には、中国よりも弱い面があります。インドは現在、油田探査でイランと1つの契約を結んでいるだけです。それはインドのトライユンが09年11月にイタリアのサイペムと合弁で締結した、ペルシャ湾のフォロウザン油田の開発契約です。

米国は、国内法によって、イランとエネルギー取引を行う企業に制裁を科すことになっています。問題は、イランのエネルギー部門に投資し、米国でも操業する外国企業に米国が制裁を科すかどうかです。

中国は米国との関係に配慮しつつも、イランの石油・天然ガス産業への関与を徐々に拡大しそうです。インドは、米国との関係を考慮してイランへの投資は抑制し、同国との貿易に集中すると見られています。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.168(2010年06月07日発行)」に掲載されたものです。

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