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インドの今を知る

2010年12月6日

各社とも、インドに本腰を入れてきている・他

各社とも、インドに本腰を入れてきている・他

2010年11月4日付の京都新聞の記事「京の企業、インド進出加速 販売拠点 現地に続々」は、京都の企業がインド進出を加速している、人口12億の巨大市場で急成長する現地製造業の部品・資材需要は大きく、日本とインドの経済連携協定(EPA)締結合意も追い風となって、各社が販売体制の強化を急いでいる、というものでした。

オムロンは9月末、インド南部のバンガロールで取締役会を開きました。海外での取締役会開催は2005年秋の中国以来のことでした。役員は、現地の自動車メーカーやソフトウエア会社も視察しました。立石義雄会長は「インドには非常に魅力的で大きなビジネスチャンスが存在する。同国での10年後の売上高を500億円規模にしたい」と強調しました。同社は産業機械向け制御機器の販売を強化するほか、中間層の拡大を見込んでヘルスケア部門の現地子会社を11月下旬に設立し、家庭用血圧計の売り込みにも力を入れます。

京セラは昨年7月、ニューデリー近郊に販売会社を設立し、インド向けの販売拠点をシンガポールから移しました。そこを拠点に、自動車の製造機械などで使われる金属切削工具の営業網の整備を進めています。

今年10月に現地販売会社を設立した村田製作所も、自動車やエネルギー分野を中心に電子部品の需要が大きく伸びると予測し、新興国市場でのトップシェア獲得を目指して力を入れています。

05年10月に現地の自動車部品大手、タタ・オート・コンプシステムズ社と自動車用鉛蓄電池の製造・販売会社を設立したGSユアサは、07年度から製造工場をフル稼働させました。販売数量は07年当時の20万個から、10年度は85万個の見込みで、インド市場の力強さに手応えを感じています。

現在はチェンナイに駐在員事務所を置くロームも、販売会社の設立など営業体制の強化に向けた検討を進めています。

インドの製薬市場向けに汎用分析計測機器を販売する島津製作所は、安価な労働力と国際水準の製造技術力に支えられ、中国と並ぶ『世界の工場』としても注目しています。

 

品質重視で、価格的にはインパクトに欠ける

ブルームバーグの2010年10月21日付記事「トヨタ:売れ筋のスズキ上級車に挑む-インドの低価格市場へ参入」によると、トヨタが来年1月に投入する小型車「エティオス」の価格はスズキの「スイフト並み」とのこと。スイフトの最低価格は40万5300ルピーで、トヨタがインドで販売する最安値の「イノーバ」の83万5000ルピーの半値程度となります。トヨタは「品質へのこだわり」を捨てていないとし、インド市場のニーズを長時間議論した結果、「最もアピールすべき点はその価格帯での高品質・高機能だった」とのことでした。

エティオスは価格抑制のため、エアバッグなどを標準装備から外した代りに、インドでは、小型車に4人で乗りこむのが一般的だということで、後部座席の空間を広くしました。

業界の専門家は、インドでスズキは品質の良さに定評があってブランド力もあり、その価格を下回らない場合は品質をアピールしてもインパクトに欠けると指摘しています。インド市場でシェア約45%のスズキが販売している主な車は、スイフトより安い価格帯で「Aスター」の35万6000ルピー、現地で最も売れている「アルト」で最低価格22万9000ルピーです。また、米ゼネラル・モーターズ(GM)は1月に小型車「ビート」を33万ルピーで発売しています。

エティオスの開発は現地で調達可能な部品を使用するコンセプトで、エンジンとトランスミッションの現地生産に踏み切りました。 現地生産と品質確保の両立に欠かせなかったのが人材育成です。インドでは人材育成を目指してトヨタ工業技術学校を07年に開校。7月には初の卒業生を送り出し、全員が現地トヨタへの入社を希望したということです。

トヨタのインド販売は今年7万台程度ですが、来年はエティオス販売の6万3000台が上乗せになることもあり、倍増の14万~15万台を見込んでいます。トヨタはインド市場でのシェアは08年で3.3%ですが、市場シェアで5~7年のうちに少なくとも10%を確保するという見通しを示しています。

トヨタはインドから新興国向け車両輸出も検討しています。

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土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.180(2010年12月06日発行)」に掲載されたものです。

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