シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPエアコンにおける『初のボリュームゾーン商品』・他

インドの今を知る

2011年1月17日

エアコンにおける『初のボリュームゾーン商品』・他

エアコンにおける『初のボリュームゾーン商品』

MSN産経ニュースの記事「印で3万切るエアコン販売 パナソニック、市場開拓へ」(2010年12月14日付)は、パナソニックが発表した、インド市場に投入するエアコンの新シリーズについてのもの。目玉の新商品「CUBE(キューブ) AC」は1万5,500ルピー(約2万8,700円)と低価格で、インドでの販売拡大に向けた戦略商品となります。CUBEは同社にとって、エアコンにおける「初のボリュームゾーン商品」です。

日本の家電メーカーは、新興市場でLG電子など韓国メーカーに押されて劣勢ですが、現地の消費者ニーズに合った低価格商品を投入し、巻き返しを図っています。CUBEの開発に当たっては首都デリー近郊に設置した市場調査センターを通じ、54世帯の家族と94の販売店を対象に徹底的な聞き取り調査を実施。インドは日本と比べてかなり暑く、それほどこまめな電源の操作などは必要ないことから、リモコンは不要と判断しました。一方で、大風量といった機能面に加え、インドでは中間層を中心に集合住宅に住む人が増えていて室内のエアコン設置スペースに制約が多いので、省スペース、静音性にはこだわりました。CUBEはマレーシアで製造し、インドに輸入します。

パナソニックは従来、インドでも日本国内と同様の高機能製品を展開してきましたが、昨年5月の中期経営戦略で、新興国でのニーズを取り込んだ普及価格帯の商品(ボリュームゾーン商品)展開を推進する方針を表明しています。これを受けて、インドでは簡易な台座を採用しバックライトを1本のみとして価格を他社製品より6,000ルピーほど安くした、32型の液晶テレビをすでに発売しています。この製品は低価格化を実現するだけでなく、高出力スピーカーを搭載し、大音量を好むインドの消費者のニーズに応えています。

パナソニック・インディアの伊東大三社長は、「セパレート型(室内機と室外機で構成されるタイプ)エアコン市場でのシェアを12年までに25%に引き上げたい」と述べています。パナソニックは、インドでのグループ売上高を10年度見込みの600億円から、11年度に1,000億円に引き上げる目標を打ち出しています。

日本企業の参入本格化で、韓国企業との争いが激化

毎日新聞2010年12月16日付の記事「インド薄型TV、日韓競争激化 成長市場、四半期ごと首位交代」は、インドの薄型テレビ市場で、ソニーと韓国のLGエレクトロニクス、サムスン電子によるシェア争いが激化し、四半期ごとに首位が入れ替わるデッドヒートが展開されていることを伝えるものでした。

インドは、安価なブラウン管テレビが全テレビ販売台数の8割前後を占めています。しかし、所得増に伴い12年には薄型テレビが逆転すると予測される成長市場。先行した韓国勢を追う日本メーカーが攻勢を強めています。

ソニーは昨年4~6月の薄型テレビ市場で出荷台数ベースで27.1%のシェアを獲得し、05年の参入以来、四半期ベースで初めて首位に躍り出ました。1~3月はLG、サムスン、ソニーの順で、7~9月は再びLGが首位でしたが、1~9月の通算ではソニーがわずかに韓国勢を上回っています。ソニーは家庭訪問で現地ニーズを探り、「映画を大音量で見たい」との要望に合わせて08年に発売した大口径スピーカー搭載モデルがヒットしました。昨年は富裕層向け高級モデルを出す一方で、中間層向けに22~26型の販売を拡大。価格は22型で1万6,900ルピー(約3万1,000円)としました。インドの薄型テレビ出荷台数は、09年に161万台でしたが、10年は332万台と倍増する見通し。14年には1,845万台と、日本の09年(1,374万台)を上回る規模に成長する見込みです。

パナソニックは7月、現地で好まれる壁掛けタイプを発売しました。グループの販売店1万2000店を活用し、白物家電と一体で販売攻勢をかけていきます。東芝もインド市場に本格参入する方針を示し、2010年12月下旬から電力事情の悪い新興国向けのバッテリー搭載モデルなどを順次発売します。09年度に1%弱だったシェアを、13年度に10%まで高めることを目指しています。大角正明上席常務は「販売の新興国比率を高めることがテレビ事業生き残りのカギ」と語っています。

ただ、韓国勢からシェアを奪うのは容易なことではなく、後発の日本メーカーにとっては、ブランド力の強化が必要になります。

スクリーンショット 2015-07-01 20.12.58

土肥克彦(有限会社アイジェイシー

福岡県出身。九州大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。東京本社勤務時代にインドでのソフト開発に携わる。2004年に有限会社アイジェイシーを設立し、インド関連ビジネス・サポートやコンサルティング・サービス等で日印間のビジネスの架け橋として活躍している。また、メールマガジン「インドの今を知る!一歩先読むビジネスのヒント!」を発行、インドに興味のある企業や個人を対象に日々インド情報を発信中。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.182(2011年01月17日発行)」に掲載されたものです。

おすすめ・関連記事

シンガポールのビジネス情報サイト AsiaXビジネスTOPエアコンにおける『初のボリュームゾーン商品』・他