2005年7月4日
『電車男』中野独人
読んでいて3回泣けそうになった、これは友人の上司の感想。その部下である友人は映画を観に行き「悪くなかった」と言っていた。しかも、何処かですすり泣きが聞こえたそうだ。胡散臭い、それが私の感想。
21世紀になってまだ5年目なのに、早くも今世紀最強の純愛物語だそうだ。正直に言うと、本が発売されてからWeb上で断片的に読んだだけで、最初から最後までを通して読んでいない。見ず知らずの赤の他人ではなく何故近くにいる友達に相談しないのかなと思った瞬間、非現実的な展開に胡散臭さを感じ、興味を持続することができなかった。誤解しないで欲しいのだが、事実ではないから面白くないと言っている訳ではない。私自身はノンフィクションと思っていたので興味を失っただけで、フィクションとして楽しめば良いのだから。
読み辛いしストーリーも至極退屈だが、見知らぬ人たちが電車男を励まし、助言を与えつつ見守っている姿は微笑ましい。また、電車男の書き込みを読んで、そういえばこんな些細なことで悩むこともあったなと昔を振り返るのも悪くない。こう書いていると、きちんと読んでみようかという気になるから不思議だ。それにしてもアスキーアートには感動すら覚える。よくここまで表現できるものだ。
新潮社
協力=シンガポール紀伊國屋書店
この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.051(2005年07月04日発行)」に掲載されたものです。
文=茂見