2026年7月24日
シンガポール貿易産業省、10月から「エネルギー・貿易産業省」へ改称 エネルギー政策を重点分野に
シンガポール政府は、現在の貿易産業省(Ministry of Trade and Industry:MTI)を2026年10月1日付で「エネルギー・貿易産業省(Ministry of Energy, Trade and Industry:METI)」へ改称すると発表した。エネルギー政策の重要性が急速に高まる中、エネルギー分野を省名に明記することで、経済成長とエネルギー安全保障、脱炭素化を一体的に推進する体制を強化する狙いがある。
新設されるMETIは2人の大臣が共同で率いる。副首相のガン・キムヨン氏は「貿易・経済戦略」を担当し、自由貿易協定(FTA)の推進や海外投資、国際経済政策を統括する。一方、タン・シー・レン氏は人材開発相を退任し、「エネルギー・産業」を担当する大臣として、エネルギー政策や産業競争力の強化に専念する。さらに、グレース・フー持続可能性・環境相は引き続き貿易関係担当相を兼務し、国際的な経済連携を支える。
ローレンス・ウォン首相は記者会見で、「エネルギーはシンガポールの経済競争力、産業変革、そして長期的なレジリエンス(強靱性)の中心的な課題となっている」と説明した。天然ガスへの依存が続く一方で、再生可能エネルギーの導入拡大や近隣国からの低炭素電力輸入、水素・炭素回収技術などへの取り組みが加速しており、エネルギー政策を国家戦略の中核に位置付ける必要があるとの認識を示した。
また、近年は地政学リスクの高まりや世界的なサプライチェーンの再編により、貿易政策とエネルギー政策を連携させる重要性が増している。政府は、エネルギーの安定確保と産業競争力の維持を両立させることで、製造業やデータセンター、半導体産業など電力需要の高い分野の成長を支えていく考えだ。今回の組織改編は、シンガポールがアジアのエネルギーハブおよびビジネス拠点としての地位をさらに強化するための重要な一歩と位置付けられている。
省名変更は単なる名称変更ではなく、国家戦略の優先順位を反映した組織改革といえる。エネルギー安全保障、産業政策、国際貿易を一体的に推進する新体制の下で、シンガポールは脱炭素社会への移行と経済成長の両立を目指し、アジアにおける競争力の維持・向上を図る方針である。

