2026年7月24日
身寄りのない高齢者の「最期」を支える支援が急増 無償葬儀の依頼、4年で3倍超に
シンガポールで、家族や親族に見送られることなく人生の最期を迎える高齢者が増加している。高齢化や少子化、単身世帯の増加を背景に、身寄りのない高齢者の葬儀を無償で執り行う慈善団体や葬儀会社への依頼は、この4年間で3倍以上に増加した。関係者は「誰一人、孤独なまま人生を終わらせてはならない」と訴え、地域社会全体で高齢者を支える仕組みづくりの重要性を指摘している。
慈善団体「Cheng Hong Welfare Service Society」では、家族のいない高齢者の終活支援や葬儀手配を行っている。同団体が2025年に対応した無償葬儀は330件に達し、2021年の106件から3倍以上に増加した。約800人のボランティアが活動しており、このうち約40人が葬儀支援を担当する。葬儀1件当たりの費用は平均約3,000Sドルで、寄付やボランティア活動によって運営が支えられている。案件は病院や介護施設、警察から紹介されるほか、地域での見守り活動を通じて把握されるケースも多い。
背景には、高齢者の単身世帯の増加がある。2024年時点で65歳以上の単身高齢者は約8万7,000人に上り、配偶者や子どものいないまま老後を過ごす人も少なくない。介護施設でも家族がいない入居者が増えており、施設職員が遺体の引き取りや葬儀手続きなど、本来であれば家族が担う役割を果たすケースが増加しているという。
葬儀会社も社会的な役割を広げている。Direct Funeral Servicesでは年間120件以上の無償葬儀を実施し、引き取り手のない遺骨を海へ散骨する活動も続けている。また、高齢者の孤立を防ぐため、見守り活動や交流イベントを行う財団も設立し、生前から地域とのつながりを築く取り組みを進めている。関係者は「孤独死を完全になくすことは難しいが、地域とのつながりがあれば、異変に早く気付き、尊厳ある最期につなげることができる」と話す。
専門家は、今後も高齢化と家族構成の変化に伴い、こうした支援の需要はさらに増えると予測する。行政による高齢者支援策は拡充されているものの、孤立の防止には家族や近隣住民、ボランティア、福祉団体が連携した地域ぐるみの支援が欠かせない。人生の最期を安心して迎えられる社会を実現するためには、終活や希望する葬送方法について早い段階から話し合うことも重要な課題となっている。


