2026年5月14日
シンガポール、AI時代に備え「キャリアブリッジ」導入検討 転職支援を強化へ
シンガポール政府は、AI(人工知能)や自動化、コスト構造の変化によって職を失うリスクのある労働者に対し、新たな職種への移行を支援する「キャリアブリッジ(Career Bridges)」制度の導入を検討している。これは5月13日に公表された「経済戦略レビュー(ESR)」最終提言の一環である。
制度では、影響を受けやすい職種の労働者を対象に、既存のスキルや経験を活かせる隣接分野の職業へ移行できるよう、職業訓練、キャリア相談、就職マッチングを一体的に提供する。政府は、大規模な失業が発生する前に、業界団体や企業と連携しながら、事前に転職支援の仕組みを整備したい考えである。
背景には、AI普及による雇用環境の急速な変化がある。NTUC(全国労働組合会議)の調査では、多くのPME(専門職・管理職・エグゼクティブ)が「AI時代に対応するためスキル向上が必要」と回答している。政府は、AIを単なる人員削減の手段ではなく、「人間の能力を補完し、生産性を高める技術」と位置付けている。
またESRでは、シンガポールが世界的なAI開発競争で巨大モデル開発を目指すのではなく、「AIソリューションを開発・実証・展開する世界有数の拠点」を目指す方針も示された。AIを経済全体へ浸透させることで、企業競争力向上と新たな雇用創出を図る狙いである。
政府は今後5~10年を見据え、経済成長だけでなく、「良質な雇用を維持できる社会構造づくり」を重要課題として進める方針である。

