2026年6月1日
Q.シンガポールにおける取締役について
目次
Q. シンガポールに在住しています。ある日系企業から、シンガポール進出にあたり現地法人の取締役を依頼されました。取締役に就任するための要件を教えてください。
A. シンガポールで会社を設立、登録する際には、最低1名の居住取締役が必要になります。取締役に就任するにあたり、法的要件、選任方法および職務内容を正しく理解しておくことが重要です。
取締役の資格、欠格事由は以下の通りです。
●シンガポールに通常居住していること。
●18歳以上であること。
●意思決定に十分な精神的能力を有していること。
●シンガポール国籍保有者、永住権保持者または就労ビザ等により居住要件を満たす者であること。
●取締役就任を法的に禁止されていないこと。
●欠格事由に該当しないこと(例:免責されていない破産者等)。
Q. 取締役にはどのような種類がありますか。
A. 各取締役は、会社運営への関与の仕方に応じて以下のように分類されます。
●常勤取締役(Executive Director):会社の従業員として、フルタイムで勤務し、日常的に会社の事業運営を担います。代表取締役(Managing Director)も含まれます。
●非常勤取締役(Non-Executive Director):会社の従業員ではなく、日常業務に従事しません。取締役の一員として、重要事項の意思決定に参加します。
●独立取締役(Independent Director):会社、関連企業、主要株主、役員等と利害関係がなく、公正な立場から意思決定を行う取締役です。常勤取締役は従業員として会社との雇用関係があり、利益相反が生じ公正な判断の妨げとなり得るため、通常は独立取締役とはみなされません。
●名義取締役(Nominee Director):主要株主らの指示に従って行動するように指名された取締役です。ただし、名義取締役であっても、会社法上は他の取締役と同様の義務や責任を負います。
Q. 取締役の選任手続きについて教えて下さい。
A. 取締役の選任は、以下の手続きが必要です。
●取締役就任同意書(Consent to Act as Director:Form 45):会社法に基づき、取締役の選任において提出が義務付けられている書面です。選任された者は、本書面に署名し、就任への同意および同法に規定の取締役の欠格事由に該当しない旨を宣言します。
●定款(Constitution):通常、取締役の選任手続きは、会社の定款に定められています。株主総会、取締役会の決議によって取締役が選任されます。
●会計企業規制庁(ACRA)への届け出:取締役の選任から14日以内にACRA(BizFile+)へ届出が必要となります。
Q. 取締役を引き受ける前に留意すべき点はありますか。
A. 取締役の就任を承諾する前に、以下のような保護措置が講じられているかを確認することが推奨されます。
●雇用・委任契約書(Service Agreement): 常勤取締役の場合、就任に関する契約書を作成します。本契約では、取締役が担う役割や責任、職務権限、報告義務、報酬等に関する事項を定めます。
●損害賠償契約(Indemnity Agreement): 取締役が職務遂行に起因して被る損害を補填するため、適切な補償制度を整備しておく必要があります。会社による補償範囲や、訴訟費用および損害賠償請求に対する保険適用の可否などを定めます。ただし、これらの保護は法律の範囲内に限定され、詐欺行為や法的義務違反などの違法行為には適用されません。
Q. 取締役について学べるプログラムはありますか。
A. シンガポールの会計企業規制庁(ACRA)では、新規および就任予定の取締役を対象とした、無料の取締役トレーニングプログラム(Directors Training Programme)を提供しています(詳細はこちら)。本プログラムは、会社法上の義務や責任に加え、取締役の役割や法的責任、税務申告、中央積立基金(CPF)、職場の安全等の主要なテーマを網羅した内容となっています。


