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シンガポール不動産「耳寄り情報」

2019年8月26日

米中貿易戦争で五里霧中の当地不動産市況(3)

● 米中泥沼の対立の狭間で

 本校を執筆している2019年8月上旬の時点で米中対立はますますエスカレートし、争点は米国の対中貿易赤字からハイテク技術覇権争い、香港・台湾問題、そして人民元問題にまで広がってきました。トランプ大統領、習近平国家主席とも、自国内にも政敵を抱え、自身の政治生命をかけて闘っているため、いずれかが失脚するまで対立が続くとも言われています。その狭間で、小国シンガポールの経済はどうなるのか?そして、シンガポールの不動産はどうなるのかが、本コラムの関心事です。

 

● 筆者の見方:シンガポール経済は生き残りへ
 
米中貿易縮小のインパクトも大きいが …
 イギリスのシンクタンクが、ASEAN諸国の中で最も米中貿易戦争の負の影響を被るのはシンガポールで、通商・物流・金融・人的交流などへのインパクトで、直ちにGDP1%減と予測しました。

米国企業のシンガポールへの移転が増加
 7月は米国駐在員の異動シーズン。今年はArdmore Parkなどの高級幹部住宅への入居数が増加したようです。特に家族帯同者については、中国や香港を避けて、シンガポールに駐在させる傾向が顕著になってきた可能性も。

香港混乱の飛び火
 対中送還条例を巡って混乱が続く香港情勢は、特に金融拠点としての信頼性を大きく揺るがしており、華人富裕層のものも含め、大量の資金がシンガポールに流出しているとも言われています。

嵐や海賊から身を守るための避難港(Haven)
 政治的にも、米中対立のいずれの側にも積極的に肩入れせず極めて低姿勢で中立的立場を保とうとしているため、シンガポールは安全な拠点そして資産投資/逃避地としての評価が急速に高まっています。

 
● 海外不動産投資とカントリー・リスクは不可分
 
香港不動産投資家の憂鬱
豪州の投資会社が、香港の商業不動産投資の先行きを案じて、意見を求めてきました。片や親しくしている香港の大手デベロッパーは、大陸中国への投資を早くから回収し、英国、豪州等への投資に振り替えてきました。

 
マレーシア不動産投資家の憂鬱
 数年前の海外不動産広告をみると、「次はイスカンダル(マレーシア、ジョホール州)」「高利回り保証、フィリピン投資」、「これからはミンダナオ」などの見出しが踊っていますが、その後の顛末をたどってみると実に興味深い。本コラムで昨年7月~11月に「海外不動産投資のABC」として書いた通り、不動産は持ち抱えて逃げることができない高額投資商品です。また、海外不動産投資とカントリー・リスクはいわばコインの裏と表のようなもの。なぜ、これだけ高価でもシンガポールの不動産に投資が集まるのかがお分かり頂けるかと思います。

文=木村登志郎 (パシフィック不動産株式会社CEO、シンガポール宅建士)

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