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日本人社会

2005年4月25日

昨今の日中紛争事件に思うこと

日本を良く知るシンガポーリアンに、昨今の日中関係について聞いてみた

p1 (26)今月、中国国内で起っている反日デモなど、一連の日本抗議運動について、世界中で話題になっている。シンガポールには、アセアン諸国、中国、台湾、香港、韓国などのエリアをカバーしている、日本人ビジネスマンも多い。また、どの国に行っても中国系の人達と交流する機会がある私達にとって、見て見ぬふりは、できない出来事ではないだろうか。
そこで、The Japanese University Graduates Association of Singapore (JUGAS―シンガポール留日大学卒業生協会)のタン・ジョンレク氏を訪ね、日本と中国をよく知る、一人のシンガポーリアンの視点から、お話を伺ってみた。

 

シンガポール留日大学卒業生協会

「私は、ルーツが中国の海南人。シンガポールで生まれ育ち、日本に留学して、日本の良いところも、悪いところも、他のシンガポーリアンよりは多少、知っていると思います。」
そんなタン氏が、現在はビジネスの傍ら、代表を務めるこの協会は、シンガポール人で日本の大学を卒業した、元留学生達をメンバーとする協会組織である。彼らの一部には、マレーシアや中国から日本へ留学していた人もいて、メンバーは合計350名にものぼる。シンガポール人にとって、海外の大学へ進学する人は今では珍しくないが、タンさんが日本に留学していた70〜80年代では、そのほとんどの人達は、成績優秀な国費留学生であった。
そのJUGASの主な活動は、「日本―シンガポール間の友好な関係作りの促進」を目的に、学術、文化、社会の各分野での交流を積極的に行っている。またシンガポールの日本人社会との交流面では、シンガポール日本商工会議所とのジョイントセミナー開催などの活動を行っているそうだ。

 

海を越える日本留学生ネットワーク

この協会のネットワークは、さらにアセアン各国における留日大学卒業生協会ASCOJA(ASEAN Council of Japan Alumi)に加盟しており、2年に一度、大会が開催される。
その大会が今年、ちょうど、シンガポールで9月8〜10日まで開催される予定。大会には、アセアン各国から元留学生達が一同に集まり、日本、シンガポール両国からも関係省庁の大臣クラスの代表者たちが大会に集う。3年前には、JUGASのメンバーに小泉総理が直接、話しを聞くための懇談会が行われたそうだ。そんな海外ネットワークをもつ協会で、タン氏の会長としての主な役割はなんですか? と聞くと、彼は真剣な眼差しで「JUGASのメンバーには、沢山の優秀な人達がいて、彼らは現在、政府や民間企業で活躍している人ばかり。そんな優秀な人達で人材のネットワークを作り、色々な地域や分野で、彼らの長所が発揮できるように、私も力を尽くしていきたいです。」と流暢な日本語で答えた。

 

ケース・スタディ|日本軍による占領の歴史と、シンガポールの堅実な対処

p2 (24)今回のインタビューのテーマは、両国の人にとって、歴史的、感情的にも繊細な問題。普段、日本とシンガポールの良好な関係作りに励んでいるタン氏も、ここ最近の中国での反日的な出来事を新聞で読んでいて、考えさせられたという。「シンガポールも、規模は違っても、中国と似たような過去がありました。そして、現在のシンガポールがある。だからこそ、中国にも、この日中関係を泥沼化させずに、良い方向へもっていって欲しい」。
「また、これまでの歴史的なシンガポール国民の日本に対する感情に対して、どのようにシンガポール政府が堅実的な方法で国民感情に対処してきたのか?という事例を、2つの論点に絞って、中国や日本人の方達と共有したいと思います。」と次のように語った。

 

対日感情

シンガポールでも、日本軍による占領の時代が終わった後、日本に対してのネガティブな国民感情は実際、何年もの間、国民の心のしこりとして残り、一部の華僑の人達による反日デモ活動もあった。
しかし、シンガポール政府は自国の将来を見据え、国民のネガティブな「恨み」の感情を、「恨んで返す」という方法で教育をしなかった。
日本軍による侵略を、逆に説得力のある事例として利用し、「自国の弱みを知る」ことを国民に教育、啓蒙した。
そして、現在でも、2月15日(1942年、日本軍が侵略した日)をトータル・ディフェンス・デー(Total Defense Day)という国民の記念日とし、軍事、経済、心理、社会における国防の重要性を国民に啓蒙する活動を通して、国が将来、存続していくことの重要性を伝えている。

 

対日関係

シンガポールも、日本との間で歴史的な悲劇を経験したが、政府は感情的になって、日本との関係をボイコットするのではなく、むしろ、日本の優れている部分(経済力、製造業の技術、物の品質の高さ等)に注目し、それを活用することで、自国のレベル・アップ、成長につなげてきた。
つまり、シンガポール政府は、国民のネガティブな感情をポジティブなパワーに変換させ、相手の強みを自国へ取り込んでいく動機付けを行い、自国の成長へと導いた。
そして、今日のシンガポールが、今、ここにある。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.041(2005年04月25日発行)」に掲載されたものです。
文= AsiaX編集部

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