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社説「島伝い」

2018年5月24日

マレーシアの政権交代劇から見えるもの

5月9日に実施されたマレーシアの総選挙でマハティール氏が率いる野党連合が過半数以上の議席を獲得、与党連合・国民戦線(BN)を破ったことがマレーシア国外でも大きく報じられました。今回の選挙結果に大きく影響したことの一つが、マレーシア国営投資ファンド「ワン・ マレーシア・デベロップメント(1MDB)」をめぐる疑惑。前首相ナジブ氏の個人口座に約7億米ドルが振り込まれたとする公文書記録の存在が2015年に発覚。1MDBには数十億米ドルに及ぶ資金不正流用の疑いもあり、国民の間に大きな不信感が生まれていました。また、3年前に導入された物品・サービス税(GST)の廃止をマハティール氏が公約に掲げていたことも、野党連合への支持を後押ししたようです。

 

ナジブ首相政権下にあった2009年からの9年間でのマレーシア経済の成長ぶりや、インフラ整備の進展などを見れば、前政権が同国の発展に貢献した部分も少なからずあったはずです。しかし、1MDBでの資金不正流用疑惑の捜査チームを率いていた法務長官の解任が前政権による捜査妨害と受け取られたことや、2016年施行の「国家安全保障会議法」が市民の自由を規制するものになりかねず不信感を招いた、といったことなどが国民の投票行動にも影響したようです。マハティール氏が1981年~2003年まで首相だった際にマレー人を優遇するブミプトラ政策を強力に推進したことで根強い反感を持っていた華人コミュニティの中でさえ、今回は同氏への支持が広がっていました。

 

1990年代のマレーシアを知る人にとっては、マハティール氏がアンワル氏と共闘したことも大きな驚きだったでしょう。副首相兼財務相を務め、マハティール氏の最有力後継候補と言われながらも、同氏によって一度は政界を追われたアンワル氏。汚職罪で服役したほか、政治的陰謀と無罪を主張し続けた同性愛の罪で2度起訴され、2015年に禁錮5年の有罪判決を受けていました。そんな両氏が2016年に再び接近。マハティール氏は、総選挙に勝利したらアンワル氏の恩赦を国王に求め、首相職を同氏に譲る意向を示していました。当面は新政権の基盤作りに注力し、アンワル氏の国政復帰を待って禅譲するものとみられます。

 

今回のマレーシアの総選挙からひとつ言えることは、たとえ良い成果があったとしても、その裏に不正が疑われ、誠実な対応がないと判断されれば信頼も支持も失うということ。ビジネスでの成功においても、戦略やかけ引き、タイミングなども大事ですが、その根底には真っ当なことを行い、信頼を損なうことはしない、といった基本姿勢があるべきということでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.334(2018年6月1日発行)」に掲載されたものです。

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