シンガポールのビジネス情報サイト AsiaX社説「島伝い」TOP10年目の盛り上げ方

社説「島伝い」

2016年10月3日

10年目の盛り上げ方

先月16日から18日まで開催されたフォーミュラワン(F1)シンガポール・グランプリについて、少し気になる話を耳にしました。以前はグランプリ開催前に早々に予約が埋まっていた人気ホテルでも、今年は直前まで空きがあったとのこと。昨年8万7,000人近かった決勝レースでの観客数が、今年は7万3,000人となるなど、観客数減少の影響が現れたものとみられます。

 

シンガポールでグランプリが初めて開催された2008年以降を振り返ってみると、市街地でのナイトレースの魅力と熱気にF1ファンだけでなく一般の人々も興奮気味だった最初の数年間と比べて、F1グランプリ開催が当たり前のことになりつつあるのは否めません。世界経済の先行きが不透明な状況が続いている影響もあってか、観客数減という問題を抱える開催地は他にもあります。世界最高峰の自動車レースと称されるF1といえども、長期的に人々の注目を集め、興味を引き続けるのはたやすいことではないということでしょうか。

 

しかしシンガポール・グランプリは、主催者だけでなく国を挙げて取り組んできた一大イベント。リーマン・ショック後に世界中で経済が冷え込んだ2009年の後、翌2010年にシンガポールは経済成長率15%という驚異的なV字回復を達成しましたが、その際に2つのカジノ総合リゾートと並んでF1グランプリ開催もまた、世界中から注目を集め、観光客や新たなビジネスをシンガポールに呼び込む上で一役買ったことは間違いありません。このまま勢いを失う形になってしまってはもったいない限りです。
シンガポールでのF1グランプリ開催は、現在の開催契約においては来年が最後。また、シンガポール航空の冠スポンサー契約も同じく来年までです。開催契約に関しては、シンガポール政府も更新に前向きとみられますが、同時に主催者は2018年以降の冠スポンサー探しが必要になります。その鍵を握っているのは、来年開催されるグランプリ。10年目らしい盛り上げ方として何ができるか、個人や企業からのアイデアを積極的に求めていく必要があるでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.311(2016年10月3日発行)」に掲載されたものです。

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