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社説「島伝い」

2010年6月21日

良き日本を壊すものの正体

不祥事続きの角界をさらに揺るがすような騒動が持ち上がり、7月の名古屋場所開催が危ぶまれる事態となっています。

 
ことの発端は、大相撲の大関琴光喜関が野球賭博に関わり、暴力団関係者から脅迫を受けているとの報道が5月にあったこと。当初は琴光喜関も否定していましたが、6月に入って他の複数の力士が野球賭博に関与していたことが発覚、琴光喜も野球賭博への関わりと暴力団関係者からの脅迫があったことをようやく認めました。さらに相撲協会が行った賭博行為の実態調査で、野球やマージャン、賭けゴルフなどに65人が関与したと自己申告したことが判明、その中には力士だけでなく親方や床山などが含まれていたこと、また、相撲協会が自己申告したからと口頭での厳重注意に留めたことから、文部科学省側も強い怒りを表す事態になり、外部者だけで組織した調査チームの設置が厳しく求められました。

 
相撲は日本の国技と言われてきましたが、日本人横綱不在の状態が何年も続き、上位陣は外国人力士ばかり。その中で大関の座にいる琴光喜をはじめ賭博行為に関与した力士達には、外国人力士が見せるハングリーさも、プロ意識もまったく足りなかったといわざるをえません。さらには、力士達の親代わりでもある親方が関与していたとあっては、示しもつきません。

 
また、今回の問題は、何百万というお金が絡む賭博に手を染めた愚行を批判し、傍観するだけでは済まされないことのように思えます。これも、日本の現状を映し出している事象のひとつではないでしょうか。

 
責任感や自覚が足らず、公共の場での迷惑行為にも関知しない日本人が増えていると感じる場面は、日本の国内外でしばしば見受けられます。つい先日も、サッカーW杯で日本がカメルーンに勝利した直後、渋谷の街中で花火を打ち上げたり、交差点に停車したタクシーの上に乗ったり、爆竹を鳴らしたりと一部のサポーター達の行き過ぎた騒ぎぶりが報じられていました。

 
私達自身も、社会の一員として意識の持ち方に問題が無いか、いま一度見直す必要がありそうです。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.169(2010年06月21日発行)」に掲載されたものです。

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