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社説「島伝い」

2012年8月20日

仕事を請けるということ

2010年の国内総生産(GDP)成長率14.5%という驚異的な高成長の後、2011年以降は緩やかながら引き続き好調を維持してきたシンガポール。一方、2011年3月の東日本大震災で受けたダメージの回復にはまだまだかかりそうな気配の日本。 平成23(2011)年度の税制改正大綱で示された相続税の増税改正案は、平成27(2015)年1月以降に実施される見通しですが、相続税が低い国、あるいは遺産税が2008年2月に廃止されたシンガポールのように相続税が無い国で個人資産の形成を行うことを考えるケースもあるようです。消費税アップ、少子高齢化の加速、国内市場の縮小傾向、リスク分散の必要性などから、海外進出の流れが一段と進むことが考えられます。

 
シンガポールには日系企業が多数進出しており、以前から進出支援ビジネスはありましたが、最近の流れはそのキャパシティをはるかに上回っているとみられます。前々回の当欄で、日本からの問い合わせに素人が好意で回答するリスクについて触れましたが、素人がプロのように高額のコンサルティング料やサービス料を請求するケースもあるようです。あるいは、仕事の依頼を安易に引き受け過ぎて自社では手が回らなくなり、対応が遅い上に実際の仕事は他人に任せてしまった結果トラブルになった、といった話も増えています。

 
これは進出支援ビジネス固有の問題などではもちろんありません。自社が提供するサービスを顧客に提案し、顧客はその内容と金額に納得して対価を支払い、企業は約束した内容・品質のものを期限までに顧客に提供する、というのは仕事において普遍的なこと。規模の大小によらず、約束より質の低いサービスや期限破りが許されることはありません。約束を守らなければトラブルになるのは必定。

 
好景気でのビジネス環境は流れが速く、動くお金の額も大きくなりがちで、平常時であれば無理だと判断するはずのこともつい「何とかできるだろう」と考えたくなるものです。しかしその判断が相手に迷惑をかけるだけでなく、自分も信用を失うことを忘れてはならないでしょう。

この記事は、シンガポールの日本語フリーペーパー「AsiaX Vol.218(2012年08月20日発行)」に掲載されたものです。

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